小噺ショート
PR

自由への渇望【ショートショート】

佐藤直哉(Naoya sato-)
<景品表示法に基づく表記>当サイトのコンテンツ内には商品プロモーションを含みます。

裕福な男が見つけた真の自由とは?

カトウは裕福なビジネスマンで、何事にも規則を守ることを誇りにしていた。

毎朝、ピカピカに磨かれた靴を履き、完璧にアイロンがけされたスーツを着て出勤するのが彼の日課だ。

しかし、心の奥には抑えきれない自由への憧れがあった。

ある日、カトウは道端で見かけた路上生活者に心を揺さぶられた。

彼らは規則もなく、自由気ままに生きているように見えた。

「規則を守ることが本当に正しいのか?」

カトウは自問し、思い切って実験をすることにした。

自らも規則を破り、路上生活者のように自由な生活を体験してみようと決意したのだ。

まず、カトウは髭を伸ばし、汚れた服を手に入れ、身なりを整えた。

そして、彼は街角に立ち、初めての自由を味わっていた。

「これが本当の自由だ」と心の中で叫んだ。

しかし、その自由な時間は長くは続かなかった。

通りすがりの警官に声をかけられたのだ。

「君、こんなところで何をしているんだ?」

カトウは微笑みながら答えた。

「ただ、自由を感じているだけです」

警官は肩をすくめながら手錠を取り出し「自由もいいが、ここでは規則があるんだよ」と言った。

カトウは規則を破った罰として罰金を払う羽目になった。

裕福な人は規則を守るか?

カトウの答えは明白だった。

裕福であるからこそ、規則を破る自由も試せるという現実。

しかし、その代償は高かった。

彼は元の生活に戻る決心をした。

自由とは一時の幻想に過ぎず、彼にとっては規則の中での平穏が最も大切だと悟ったのだ。

カトウは元の生活に戻り、再び規則正しい日々を送るようになったが、心のどこかであの日の自由な瞬間を忘れることはなかった。

それは、彼の人生における唯一の冒険だったのかもしれない。

時折、自由を夢見るその瞬間が、彼の心に小さな火を灯し続けていた。

ABOUT ME
佐藤直哉(Naoya sato-)
佐藤直哉(Naoya sato-)
ブロガー/小説家
小説を書いていたはずが、いつの間にか「調べたこと」や「感じた違和感」を残しておきたくなりました。
このサイトでは、歴史の中に埋もれた謎や、日常でふと引っかかる“気になる話”をもとに、雑学記事、4コマ漫画、風刺ショートショートとして発信しています。
テーマはちょっと真面目。
でも、語り口はすこし皮肉で、たまにユーモア。
「なんかどうでもよさそうなのに、気になる」
──そんな話を集めて、掘って、遊んでいます。
読んだ人の中に“ひとつくらい、誰かに話したくなる話”が残れば嬉しく思います。
記事URLをコピーしました