架空の社長とリアルな借金【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
「成功する人には共通の条件があるらしい」と、テレビ番組が言っていた。
勤勉さ、情熱、そして運。
まあ、そんなのは建前だ。
僕の名は中村。
僕は一流企業の社長で、豪邸に住み、高級車を乗り回す。
「成功の秘訣は?」とリポーターが尋ねると、僕はにっこり笑って答えた。
「努力と運ですね」
その夜、僕は地下室にいた。
暗闇の中で、不気味なシンボルが壁に描かれ、床には乾いた血の跡が散らばっている。
僕は冷や汗をかきながら呟いた。
「成功の条件は…悪魔との契約だったんだ」
心臓がドクドクと鼓動を打ち、呼吸が荒くなる。
僕はあの夜、何をしたのかを思い出し、後悔の念に苛まれる。
しかし、もう戻れない。
あの力を借りなければ、僕はここまで来られなかった。
翌朝、僕は再び社長のデスクに座り、冷静に部下に指示を出す。
部下たちは僕を尊敬し、その指示に従う。
彼らの誰も、僕の秘密を知る者はいない。
「成功の条件」についての誤解は続く。
誰もが勘違いしているのは、表向きの努力と運の陰に隠された暗い真実を誰も見ようとしないからだ。
僕は静かに笑みを浮かべ、再び仕事に戻る。
成功の影には、誰にも言えない秘密が隠れている。
僕がその一部だと誰が気づくだろうか。