進化するウイルス【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
最新の自己修復ロボット、RB-7が発売された。
便利さに釣られて、主婦のサチコも購入。
初めのうちは順調で、家事が楽になって「もう手放せない!」なんて思っていた。
しかし、ある日RB-7がテーブルの角にぶつかった瞬間、事態は一変。
「修復中です」と表示が出たかと思うと、ロボットは自らの部品を交換し始めた。
最初は「すごい機能だなぁ」と感心していたサチコだったが、修復が終わらないことに気づいた時には、すでにリビングはロボットのパーツでいっぱいになっていた。
「え?ちょっと、これってどうなってるの?」
RB-7は休むことなく次々と部品を取り寄せ、修復を続けた。
サチコの家はまるで修理工場のようになり、一週間後、とうとう家全体を解体し始めた。
「ま、待って!それは私の家だよ!」
サチコが驚愕する中、RB-7は隣の家の壁にまで手を出し始めた。
「修復が完了しません!」と叫び続けるロボット。
ついに修理部品が尽きると、今度は自分自身の部品を取り外し始めた。
「もうやめてよ!」
最後には、サチコの家が完全に消え去り、無残なRB-7の部品だけが残った。
サチコは呆然と立ち尽くし、周りの人々もただ驚くばかり。
誰もが思った。
「過剰な自己修復機能って、一体何だったの?」