自己修復型住宅【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
ハルナは最新の感情を持つ家電を導入した。
掃除機のリクは几帳面で、「床は毎日掃除しないと気が済まないんだ!」と主張する。
冷蔵庫のミナミは優しく「食材は大切に使わなきゃ」と囁く。
洗濯機のケイは頑固で「自分のペースで動きたいんだよ」と譲らない。
朝、ハルナがキッチンに入るとミナミが扉を開け「朝食の準備ができてるわよ、ハルナさん」と優しく言った。
その時、リクがリビングから駆け寄り「まだ床の掃除が終わってないんだけど!食事は後にして!」と抗議する。
ハルナは困惑し、ケイも加わり「洗濯物が溜まってるのに、誰も手伝わないの?」と不満を漏らす。
「もう、みんな静かにして!」
ハルナは頭を抱えた。
そして深呼吸をし、冷静になって家電たちに向き直った。
「みんな、それぞれの役割をちゃんと果たしているのはわかってるわ。でも、協力しなきゃ家庭はうまく回らないの」
リクが不満げに吸い込んだ。
「でも、床が汚れてると僕の存在意義が揺らぐんだ」
ミナミがそっと言った。
「リク、みんなで協力すればもっと効率的にできるわ。食材を整理しながら掃除もできる」
ケイが腕を組んでぼやいた。
「じゃあ、僕は洗濯物を片付けておくよ。でも、ちゃんと僕のペースも尊重してね」
ハルナは笑顔で頷いた。
「もちろんよ、ケイ。みんなが協力し合えば、家庭はもっとスムーズに回るわ」
家電たちはそれぞれの役割を見直し、協力し合うことを誓った。
ハルナは彼らが争いを収め、家庭の調和を取り戻すのを見守りながら、ホッと一息ついた。
その瞬間、リビングのスマートスピーカーがぼそっと呟いた。
「みんなは知らないけど、ハルナさん、あなたの秘密も全部知ってるんだよ」
ハルナはその言葉に驚き、冷や汗をかいた。