次元の裂け目【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
松本は友人に紹介された佳奈に一目惚れし、短期間の交際を経て結婚を決意した。
二人はハワイで新婚旅行を楽しんでいた。
ある日、海辺のカフェでリラックスしていると、松本の携帯に見知らぬ番号から着信があった。
「もしもし、探偵です。奥さん、借金まみれですよ」と冷静な声が響く。
「え、結婚詐欺?」
松本は頭を抱えたが、佳奈に問いただすと涙ながらに過去の失敗を語り始めた。
松本は彼女の誠実さを信じ、「愛する人となら、どんな運命でも受け入れよう」と心に決めた。
数年後、松本と佳奈は経済的にも精神的にも成長し、幸せな家庭を築いていた。
ある日、押入れから古びたトランクを発見する。
中には「実は私は億万長者の相続人でした」という佳奈の手紙があった。
「な、なんだって!?」と松本は驚愕した。
その下には、「追伸:でも、この財産はすべて寄付しました」という一行が。
松本はその場に崩れ落ち、「これが俺の運命なのか」と天を仰いだ。