消えた影の絵画【ショートショート】
影に隠された真実を暴け!
探偵のイシダ・ユウは、名高い画家のナカムラ・イチロウの家にやってきた。
高価な絵画が忽然と消えたという。
窓も扉もすべて施錠されているにもかかわらず、一体どうやって盗まれたのか。
イシダはその謎に挑むことになった。
「イシダさん、どうかお願いします。私の大切な作品が…」
ナカムラは涙ながらに訴えた。
「ご安心ください、ナカムラさん。僕が必ず取り戻してみせます」
イシダはそう言って、調査を開始した。
家の中をくまなく調べ、事件の直前に訪れた人物リストを確認すると、怪しい人物が一人浮かび上がった。
ナカムラの長年の友人、マツモト・カオルだ。
「なるほど、マツモトさんですか…」
イシダは彼の訪問時の写真を見て、不自然な点に気づいた。
写真には、マツモトの影が映っていなかった。
「これはおかしい…」
イシダはマツモトの過去を調べ、彼が光の反射を利用する技術に長けていることを知った。
さらに、彼が過去に同様の手口で美術品を盗んでいたことも判明した。
イシダは光の反射を使って影を消すトリックを見抜き、マツモトが犯人である証拠を集めた。
翌日、イシダはマツモトを問い詰めた。
「マツモトさん、あなたがやったんですね」
マツモトは一瞬驚いた顔をしたが、すぐにニヤリと笑った。
「よく見抜いたな、イシダさん。でも、僕の影が消えた理由、分かってるか?」
「もちろんです。あなたは光の反射を利用して絵画を隠していたんですね」
イシダは自信満々に答えた。
マツモトはさらに笑みを深めた。
「そうさ。そして、その絵画はここに…」
マツモトは自身の影の中から絵画を取り出しながら、にやりと笑った。
その後、絵画は無事に戻り、ナカムラは感謝の意を述べた。
「イシダさん、本当にありがとうございました」
「どういたしまして、ナカムラさん。でも、ちょっと待ってください。これ、また誰かが盗もうとしたら?」
「それは心配無用です、イシダさん。この絵を盗めるのはマツモトだけですから」
ナカムラは冷静に答えた。
イシダは一瞬戸惑ったが、すぐに違和感を覚えた。
何かがおかしい。
そこでさらに調査を進めた結果、驚くべき事実が明らかになった。
ナカムラ自身がマツモトに指示を出し、自分の作品の価値を高めるためにわざと盗ませていたのだ。
イシダはその真実を知り、家を出る前に一言。
「ナカムラさん、今回の事件、まさに芸術的な一手でしたね」
ナカムラは微笑みながら答えた。
「ありがとう、イシダさん。芸術のためには、時に大胆な手段も必要なんです」
「その通りですね」とイシダは皮肉を込めて言った。
「でも次は、誰かがナカムラさんごと盗んでいくかもしれませんね」
ナカムラは一瞬驚いたが、すぐにまた笑った。
「それは面白い。さて、次はどんなトリックを考えようか」
イシダはその言葉を胸に刻みながら、ナカムラの家を後にした。
そして、ふと思った。
「次は僕の絵でも盗んでみようかな。もっと価値が上がるかもな」