理想の味はどうですか?【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
「掃除ってのは、なんでこうも飽きるんだろうな…」と、ため息交じりに窓を拭いていた中村は、ふと外に目をやった。
そこには、見事に転倒している隣人の小林がいた。
「おや、これはひと儲けのチャンスかもな」と思いつつ、中村は駆け寄って小林を助け起こした。
「大丈夫ですか、小林さん?」と、心配そうに見せかける中村。
「ちょっと足をひねっちゃったみたいで…」と小林は痛がる。
中村は彼を自宅に招き入れ、リビングに座らせた。
「ここで親切にしておけば、後で見返りがあるかも」と考えながら、応急処置を進める中村。
手当てが終わり、小林は感謝の言葉を述べた。
「中村さん、本当にありがとう。あなたがいなければどうなっていたか…」と感激の様子。
中村はにっこりと微笑み、「いつでもお手伝いしますよ」と答えた。
すると、小林の表情が急に変わり、「実は、これ全部演技なんだ。君の親切心を試したんだよ。でも、安心して。君には本当に大きな役割をお願いしたい」
「な、なんだよ…」
小林はにやりと笑い、「保険金詐欺の共犯者としてね。これで二人で大儲けできるよ」と告げた。
中村は自分の内心が見透かされていたことに愕然とし、予期せぬ展開に唖然とした。
さらに小林は続けた。
「君も保険に入ってるよね?」