煙と消えた秘密【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
田中は最新の感情認識装置のテスト中だった。
この装置は、人々の感情をリアルタイムで読み取り、適切な対応を促すという素晴らしい発明品のはずだった。
しかし、装置が突然誤作動を起こし、田中が中村に怒っていると誤解させてしまった。
「田中さん、僕に怒っているんですか?」と中村が不安そうに尋ねる。
田中は困惑しながら首を振る。
「いや、全然そんなことないよ。これ、ただの誤作動だ」
その頃、恵部長も装置の影響を受け、田中に対して無駄に厳しくなった。
「田中君、何をそんなに苛立っているのかしら?」
社内は誤解と混乱の渦に飲み込まれていた。
田中と中村は協力して原因を探ることにした。
数時間の調査の末、ついに誤作動の原因を突き止めた。
それは他部署のライバルが意図的に仕込んだ悪意のあるコードだった。
「まさか、こんなことをするなんて…」と田中は驚愕するが、ふと笑みを浮かべる。
「でも、この誤作動のおかげで普段話せなかったことがみんなと話せたじゃないか」
装置の誤作動が逆にコミュニケーションを促進する結果となった。
田中はほくそ笑む。
「次は誰に誤作動させようかな…この装置、意外と悪用できるぞ」