失われた財布の顛末【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
朝の通勤ラッシュ。
小川は自転車を漕ぎながら、政府が施行したエコ政策により、自動車使用が制限されたため道が混雑していることに気づいた。
「こんな生活、いつまで続くんだ」と隣のサラリーマンが嘆く。
小川も心の中で同意しつつ、会社に到着する。
昼休み、同僚の彩と食堂でランチを取りながら、小川は問いかける。
「エコ政策って本当に未来のためになるのかな?」
彩は少し考えてから答える。
「もちろんよ、でも少しやりすぎかもしれないわね」
数週間後、環境政策を推進する政府高官の森田が、さらに厳しい規制を発表した。
市民は限界に達し、電力使用制限や水道料金の大幅な値上げで生活の質が急速に低下した。
「もう無理だ!」という声が至る所で聞こえる。
彩も次第に政策に疑問を抱くようになる。
小川と彩は市民の声を集め、政策の見直しを求める運動を始めた。
彼らの努力が実を結び、政策は撤回された。
運動の成功を喜ぶ二人。
しかし、小川は偶然、森田が秘書と話しているのを耳にする。
「エコ政策の撤回?予想通りだ。これで俺の新ビジネスが軌道に乗る」
驚いた小川は呟く。
「彼は最初から自分の利益のために動いていたんだ。」
森田は冷ややかに笑う。
「エコもビジネスも結局は同じさ、儲けるための手段だよ」
小川は頭を抱えた。
「エコの名の下に、結局は僕たちが犠牲にされるんだな」
政策が撤回されたとしても、その影響は市民の生活に深く根付いていた。
「次は何を犠牲にするんだろう?」と小川は苦笑した。