メンタルヘルス相談窓口【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
記憶移植技術がついに実用化された。
研究者の宮田翔太は、その技術の開発者として注目を浴びていたが、実は自分の過去に対して疑念を抱いていた。
助手の高橋美奈は、亡き母の記憶を移植するために翔太の助力を求めた。
「成功です!」
美奈は目を輝かせて叫んだ。
母の記憶を持つ女性と対面し、その温かい笑顔に涙を流した。
しかし、美奈の顔は突然曇った。
「お母さん、私の誕生日を覚えてる?」
女性は一瞬躊躇い、全く別の記憶を語り出した。
それは母のものではなかった。
翔太は技術の未知の影響を感じ取り、調査を進める中で、自分の記憶が実は移植されたものであることに気付いた。
「この技術、まだ完璧じゃない…」
最後の瞬間、翔太の脳裏に残る記憶が一つ浮かんだ。
それは彼の両親が事故で亡くなる瞬間だった。
しかし、彼はその場にいなかった。
「これは…誰の記憶だ?」
翔太は自分が記憶移植の実験体であったことを悟り、驚愕した。