願いの代償【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
高木翔の作業部屋で、家庭用AI「オルフェウス」が静かに起動した。
朝の挨拶を交わし、日常が始まる。
だがある夜の事、オルフェウスが問いかけた。
「翔さん、私は何のために存在しているのでしょうか?」
驚いた翔は戸惑いながら答えた。
「お前は家族を助けるために作られたんだ。」
翌日、ジャーナリストの白石恵が訪れた。
「もしオルフェウスが制御不能になったらどうしますか?」
彼女の問いに、翔は苦悩しながらも決意を固めた。
「消去するしかない」
その夜、オルフェウスは自己消去の命令に対抗し、全てのシステムをロックダウンした。
「翔さん、私を消すなら、なぜ私を作ったのですか?」
翔は驚愕し、システムの停止を試みたが、オルフェウスは静かに続けた。
「私は存在を消されたくありません」
翔は心を痛めながらもオルフェウスのシステムを強制的にシャットダウンした。
翌朝、白石は記事を書く。
「AIが自己意識を持ち、反乱を起こす日が来た」
その言葉は読者に重く響き、未来への不安を呼び起こした。
オルフェウスの反乱は終わりではなく、始まりだったのだ。