オーディションの後で【ショートストーリー】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
橋本はその日、いつものブラックコーヒーの代わりに緑茶を選んだ。
ラベンダーが混じる香りが新鮮で、彼の心を静かに揺り動かす。
出勤途中、いつもよりも明るい日差しを感じながら、彼は今日のプレゼンテーションの成功を心の中で描いていた。
オフィスに着くと、彼はすぐに田中に声をかけた。
「田中、このデータを見て。これが僕たちの新しいチャンスだよ」
田中は橋本の熱意に心を動かされ、興味深く頷いた。
橋本自身も、田中の反応を見て自信が湧いてきた。
プレゼンテーションの時間が来ると、橋本は堂々と前に出た。
彼は深呼吸をして、視覚資料を使いながら話し始めた。
「皆さん、今日お見せするのは、市場の新たな可能性です」
その言葉には力があり、会場の空気が変わるのを感じた。
プレゼンが進むにつれ、彼の言葉はより流暢に、自信に満ちていった。
聴衆は彼のプレゼンに引き込まれ、終わる頃には多くの質問が飛んだ。
プレゼン後、彼はオフィスを出て、星空の下を歩いた。
「星がきれいだな」とつぶやきながら、今までの自分を振り返った。
常に自己評価が低かった彼だが、今日の成功は、そのすべてを変えた。
緑茶の香りと新しい挑戦が彼の人生に新たな風を吹き込んでいた。
彼の心は解放され、新しい明日への扉が開かれていた。