冷たい空からの解放【ショートストーリー】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
松本はカフェの窓際でコーヒーをすすりながら、雨音を聴きつつ、向かいに座る友人が新しい本に没頭しているのを眺めていた。
彼は静かに問いかけた。
「また新しい本か?本当に効果あるの?」
友人は本を閉じて、穏やかな声で答えた。
「ええ、実はこれ、朝の時間をうまく使うテクニックが書いてあるんだ。今朝、ジョギングから始めたら、その後の仕事がすごくスムーズに進んでね」
松本は興味深げにうなずきながら、苦笑いを浮かべた。
「自己啓発には飽きたんだけど、失敗から学んだこともある…かな?」
その日の帰り道、ふと立ち寄った本屋で「時間を買う技術」というタイトルの本が彼の目に留まった。
手に取りページを繰るうちに、過去の失敗から何を学んだかを思い返し、この本が違うと感じた。
具体的な例とシンプルなアドバイスが彼の心に響いたのだ。
家に帰り、松本は新しい時間管理法を試し始めた。
早朝の散歩を習慣にすると、気持ちが晴れやかになり、家族との会話も増えた。
数週間後、再びカフェで友人に会った松本は、変化を自慢げに話した。
「その本で朝のルーチンを変えてみたんだ。すごく効果があって、家族との時間も増えたよ。失敗から学んだことが、今回の成功に繋がったんだと思う」
友人は温かくうなずきながら応じた。
「時間は貴重だからね。上手く使えば、人生が変わる。それを実感できて良かったね」
カフェの柔らかな照明と雨音が心地よく響き、松本は新しい一日の始まりに胸を躍らせながら、過去の失敗を乗り越えた自分を誇りに思った。
時間を賢く使うことの喜びを新たに知り、彼の人生には新たな朝が訪れていた。