最後のページの後に【ショートストーリー】

消失の謎を追う

平穏無事という言葉がふさわしい日常が、ある朝突如として裂け目を見せ始めた。

それは、人々が理由も告げずに、この世界から消え去るという、まるでファンタジー小説の一節のような出来事であった。

しかし、この現象は小説のページを閉じれば終わりというものではなく、現実のものとして社会を揺るがしていた。

テレビやインターネット、街角の会話の隅々にまで、この不可解な現象が話題を占めている。

しかし、それについて語られるのは憶測の域を出ず、真実は闇の中に隠れたままであった。

この謎を追い求めることを決意したのは、アレックス、一人の若き冒険家であり、情熱を持って物語を紡ぐ作家だった。

彼は日々の平穏を愛しつつも、内心では常に何か大きな冒険が待っていることを夢見ていた。

そして、政府や科学者たちも手がかりを掴めずにいる中、アレックスはこの現象の背後にある真実を解明するための手掛かりを見つけ出そうと決心する。

これは、運命が彼に投げかけた挑戦であり、彼の人生を変える大きな冒険の始まりであった。

予言された世界への扉

アレックスの調査は、一冊の古い小説「未来の予言」へと彼を導いた。

そのページをめくる手は、まるで運命に導かれるかのように、確かなものだった。

彼は消えた人々がこの小説を読んだ後に姿を消したという事実を突き止めた。

それは偶然の一致ではなく、何か深い意味があるはずだと彼は確信する。

アレックスは小説を手に取り、その内容を紐解き始める。

小説は未来に起こる出来事を予言しているかのように、現実とリンクしている部分が多々あった。

そして、小説の著者についての調査を深めるにつれ、アレックスは衝撃的な事実にたどり着く。

著者は、自らの作品によって読者を自分の創作した世界へ引き込むことを望んでいた。

それは、単なる物語を超えた、著者の野望が反映された行為だった。

著者は、自身の創造した物語の中で、読者と共に永遠に生きることを夢見ていたのだ。

この発見は、アレックスにとって新たな謎と疑問を投げかける。

著者はどうやってこのような現象を起こすことができたのか？

そして、なぜ彼はそんなことを望んだのか？

著者の目的を探るうちに、アレックスは自らも小説の世界に引き込まれていく。

彼は小説のページをめくるごとに、現実とは異なる、著者が創造した世界の一部となっていくことを感じ始める。

しかし、それは同時に、著者が最終的に望んだ「最後の読者」になるという運命をも意味していた。

新たな創造主の誕生

アレックスが小説の最後の一行を読み終えた瞬間、彼の周囲は静寂に包まれた。

そして、彼は理解した。

著者が最終的に望んでいたことは、自分自身の消滅だけではなく、新たな創造主をこの世界に誕生させることだったのだ。

アレックスがその役割を引き受けたことで、物語は完結し、著者は満足して消え去った。

しかし、アレックスにはまだやるべきことがあった。

彼は消えた人々を現実世界に戻す決意を固める。

不思議なことに、彼の意志が現実を変え始めたかのように、失われた人々が次々と現実世界に戻り始める。

彼は「最後の読者」になったことで、創造主としての力を手に入れていた。

世界は再び平和を取り戻し、人々は消失事件の記憶を風のように忘れ去る。

しかし、アレックスにとって、この出来事は彼の人生を変える大きな転機となった。

彼は、自らの手で新たな物語を創り出す力を持っていることを知り、その責任と可能性に目覚める。

新しい朝、アレックスはタイプライターの前に座り、新たな物語の創作に取りかかる。

彼の指はキーを軽やかに叩き、新たな物語が紙の上に生まれていく。

彼は読者に向けて問いかける。

「もし私がその小説を読んだら、どんな世界を創るだろう？」と。

佐藤直哉（Naoya sato-）

ブロガー/小説家

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普段は小説家たまにブロガー
物語を生み出す事に楽しみを見出して様々な作品を作り出しています。
特にショートショートのような短い小説を作ることに情熱を注いでいます。
楽しんで頂ければ嬉しく思います。