逆転の智恵【掌編小説】
昔々、ある森の中に賢い猫が住んでいました。
彼の名前はシロ、森の中で最も狡猾な猫として知られていました。
シロは狩りが得意で、特に鳥を捕まえるのが上手でした。
森の鳥たちは彼を恐れ、彼が近づくとすぐに逃げ出すほどでした。
しかし、その森にはシロがまだ捕まえたことのない一羽の鳥がいました。
その鳥の名前はコトリで、彼女は非常に賢く、いつもシロの罠を巧みに避けていました。
ある日、シロはコトリを捕まえるために新しい作戦を考えました。
彼は自分がいないふりをして、コトリがよく訪れる木の近くに隠れました。
そして、コトリが現れるのをじっと待っていました。
やがて、コトリが飛んできて、木の枝にとまりました。
シロはその瞬間を待っていました。
彼は素早く飛び出し、コトリに飛びかかりました。
しかし、驚くべきことに、コトリはすばやく飛び上がり、シロの手から逃れたのです。
シロは驚き、そして困惑しました。
彼は自分が失敗するなんて考えられないと思っていました。
シロはコトリに尋ねました。
「どうして僕の攻撃から逃れることができたの?」
コトリは高い枝から下を見て、微笑みました。
「あなたが教えてくれたんだよ。あなたの狩り方を見て、いつも学んでいたの。あなたがどう動くか、どんな罠を仕掛けるか、それを見ていたのよ」と答えたのです。
シロはその答えに驚きました。
彼は自分がコトリの先生だったとは思ってもみませんでした。
シロは考えました。
「もしかして、僕は彼女に自分のことを教えすぎたのかもしれない」
そこから、シロはコトリを捕まえることを諦めました。
彼はコトリに敬意を表し、二人は森でお互いを尊重しながら生きるようになりました。
シロは他の猫たちにも、コトリに手を出さないようにと警告しました。
この出来事から、シロは大切なことを学びました。
それは、自分の技術や知識を他者と共有することの大切さと、時には自分の敵から学ぶことがあるということです。
そして、森の中でシロとコトリは互いに尊敬し合い、互いに学び合う関係となりました。
それは、シロにとってもコトリにとっても、新しい友情の始まりでした。