危険な誤解【掌編小説】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
子供の頃、私には忘れられない悲しい出来事があった。愛犬が突然行方不明になったのだ。
それは私の心に深い傷を残し、時間が経つほどにその痛みは増していった。
夜ごとに愛犬が無事に戻ってくることを願ったものだ。
そしてある日、奇跡的にタイムトラベルの能力を手に入れた。
過去を変えられる。
私はその力を使い、愛犬がいなくなる運命を変えようとした。
最初の試みでは、愛犬がいなくなる日を変えることに成功した。
しかし、戻ってみると、予期せぬ問題が発生していた。
愛犬を救う代わりに、他の大切なものを失っていたのだ。
何度も過去を変え、何度も新たな問題に直面した。
しかし、その都度、私は元の出来事が最良のバランスだったことを悟る。
遂に、私は元の時代へ戻った。
愛犬がいなくなる出来事はそのままに。
しかし、今の私にはそれが必要なことだと理解できた。
その出来事は、私に家族の絆の大切さ、そして失うことの意味を教えてくれたのだ。
そして、時が流れたある日、散歩中に見慣れた姿を見つけた。
そこには、長い時間を経て、老いた姿の愛犬がいた。
彼は隣に新しい家族を連れており、幸せそうに暮らしていた。
あの日、彼が道に迷ったのは、新しい家族に出会うために必要なことだったのだ。
その瞬間、私はすべてを理解した。
一見不幸な過去の出来事が、未来の幸せへと導く道標となることもあるという事を。
愛犬の新しい家族との再会は、すべてが最良だったことの証だった。
「過去を変えることはできない。しかし、それを受け入れ、前に進むことはできる」
私はそう心に決めた。
愛犬の失踪という悲しい出来事は、今や私の人生の大切な一部となっている。
過去の苦しみを乗り越え、新たな幸せを見つける強さを私は得たのだ。