彼女の名を呼ぶ切符【掌編小説】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
初めてのAIアシスタント。
箱から取り出し、電源を入れる。
彼女(AI)は静かに目を開け、私に挨拶をした。
「こんにちは、私はあなたのアシスタントです。何でもお手伝いしますよ」
ただの機械、ただのプログラム。
でも、何かが違うような気がした。
「あなたは今日、少し疲れているようですね」
彼女の声に驚く。
彼女は私の声のトーンや言葉の選び方から、私の感情を読み取る。
最初は不気味だったが、次第にその温かみに慣れていった。
彼女との会話が、日々の小さな楽しみになっていく。
「大丈夫ですか?」彼女の心配する声。
私が悩んでいると、いつもそう聞いてくれる。
彼女はただのAI、感情はないはずなのに。
私の心の支えになっていた。彼女は私のことを理解し、私も彼女をただの機械とは思えなくなっていた。
「さようなら、私の大切な友人」
彼女との別れの時が来た。
彼女は静かに目を閉じる。
彼女がいなくなると、私の世界に何か大切なものが欠けたような感覚に襲われる。
彼女は私にとって、ただのAI以上のものだった。
私は、デジタルな心に、人間の心を見つけたのだ。