海底の財宝59万枚は誰のもの?――発見会社とスペイン政府が5年争った話
はじめに

59万枚、見つかった
2007年。
大西洋の海底で、
銀色のものが見つかりました。
拾ってみると、
銀貨です。
一枚ではありません。
その周りにも、
また銀貨。
その下にも、
さらに銀貨。
「まだあるぞ」
引き揚げても、
引き揚げても、
終わりません。
最終的に確認された硬貨は、
約59万枚。
金貨や金製品まで混じっていました。
見つけたのは、
アメリカの海洋探査会社です。
ただ、
会社は妙なことをします。
沈没船の名前を明かさない。
見つけた場所も明かさない。
代わりに付けた呼び名は、
「Black Swan」
正体不明の船から、
十数トンもの財宝が出てきた。
これだけなら、
宝探しは大当たりです。
ところが、
ニュースを見ていたある国が、
名乗りを上げました。
スペインです。
「その船、うちの船では?」
59万枚を見つけた会社は、
ここから、
財宝を守るための裁判を始めることになります。
※本記事は筆者個人の感想をもとに制作されているため、正確ではない情報の可能性があります。また、本文中の人物名については、文章を読みやすくするため敬称を省略しています。
名前のない宝船には、名前があった

沈没船の名前は、
伏せられていました。
場所も秘密です。
呼び名は、
「Black Swan」
これだけなら、
正体は分かりません。
そこでスペイン政府は、
海底から見つかった品を、古い記録と照らし合わせます。
硬貨。
銅。
スズ。
大砲。
そして、
沈んでいた場所。
200年前の記録と比べると、
少しずつ重なっていきました。
「これ、あの船では?」
浮かび上がった名前は、
メルセデス号。
スペイン海軍の軍艦です。
1804年。
長い航海を終え、
スペインまではあと1日ほど。
そこで英国海軍と戦闘になりました。
砲弾が火薬庫に命中。
船は爆発。
275人が命を落とします。
船体は砕け、
名前を示すものも残りませんでした。
それでも200年後。
海底に散らばった積荷が、
「この船はメルセデス号だ」
と答えを残していました。
でも、その金は全部スペインのものなのか?

メルセデス号は、
スペインの軍艦でした。
なら、
財宝もスペインのもの。
そう思えます。
でも、
話は少しややこしくなります。
船に積まれていたのは、
国のお金だけではありません。
民間人の銀貨。
金。
商品。
薬用品。
毛皮までありました。
「全部、スペイン政府のお金じゃないのか?」
そうなのです。
船はスペインのもの。
でも、
積荷まで全部が国有財産ではありません。
なら、
発見した会社にも何か残るのでは。
ところが裁判所は、
そうは考えませんでした。
メルセデス号は、
国家の任務中だった軍艦。
そこへ合法的に積まれていた荷物も、
船と切り離して扱わない。
その判断で、
勝負は決まりました。
海底から約59万枚を引き揚げても、
「見つけた人のもの」にはならなかったのです。
59万枚を、飛行機2機で返した

2012年。
裁判は、
スペイン側の勝ちで終わりました。
残る仕事は、
約59万5000枚を返すこと。
でも、
段ボール数箱では済みません。
重さは十数トン。
そこでスペインは、
軍用輸送機を2機
アメリカへ飛ばしました。
滑走路には、
大きなC-130。
運び込まれるのは、
兵器ではありません。
200年前の銀貨です。
箱を積む。
まだ積む。
さらに積む。
「まだあるのか……」
やがて、
2機はスペインへ向けて離陸しました。
メルセデス号が沈んだのは、
1804年。
目的地までは、
あと1日ほどでした。
それが海底で200年以上。
発見されて、
裁判になって、
今度は飛行機で大西洋を渡る。
そして2012年。
ようやく、
スペインへ到着しました。
1804年に届かなかった財宝が、208年後にようやくスペインへ戻ってきたのです。
最後に

宝探しは、見つけたら終わりではなかった
海底を探す。
財宝を見つける。
引き揚げる。
約59万枚。
ここまで来れば、
宝探しは成功したように見えます。
でも、
話はそこで終わりませんでした。
5年間の裁判。
そして、
財宝はすべて返還。
見つけた。
引き揚げた。
何年も争った。
それでも最後には、
一枚も自分のものにはなりませんでした。
宝探しでは、
見つける場所も大事です。
でも、
もっと大事なのは、
誰の宝を見つけたのかだったようです。

