中世の兵士たち
PR

中世ヨーロッパの歩兵たち:お金と身分で変わる“命の値段”

佐藤直哉(Naoya sato-)
<景品表示法に基づく表記>当サイトのコンテンツ内には商品プロモーションを含みます。

はじめに

中世ヨーロッパの戦場に立つ歩兵といえば、同じ槍を手にした大勢の兵士たちが思い浮かぶかもしれません。

ですが実際には、彼らは「同じ歩兵」ではありませんでした。

生まれや財産、所属する軍団によって装備も役割も、そして命の値段までもが大きく違っていたのです。

ここでは、13〜16世紀の歩兵をめぐる格差をわかりやすく見ていきましょう。

※本記事はエンターテインメント目的で制作されています。

法律で決まった“装備ガチャ”

イングランドでは 武具令(1181年)ウィンチェスター法(1285年) という法律が作られ、資産ごとに所持すべき武具が細かく規定されました。

裕福な自由民には鎖帷子や兜、槍や盾が義務づけられ、下層の人々は槍や簡易な盾のみ。
要するに「お金がある人ほど厚い鎧を着られる」という制度です。

さらに当時はまだ制服の概念がなく、兵士の服装や装備はバラバラ。
戦場の隊列は「貧富の格差」をそのまま映し出すパレードでもありました。

村人が徴兵された場合

徴兵されるのは主に農民でした。

彼らは普段、畑を耕すための農具を手にしていた人々です。
招集されても装備は自前調達が基本
槍や革の防具がせいぜいで、金属鎧は夢のまた夢でした。
訓練も短期間で、行軍や陣形を保つ程度の基礎が中心
攻城戦のような専門技術は十分に学べません。

戦場では、彼らは重さを受け止める存在。
華やかな突撃や戦果は騎士や精鋭に譲り、農民兵は隊列を維持し、押し合いに耐える役割を担いました。
言うなれば祭りの神輿の担ぎ手。
派手さはないが、なくては動かない存在です。

傭兵団に属した場合

一方で、スイス傭兵やランツクネヒト、イタリアのコンドッティエーリのような 傭兵団 は、契約で動くプロ集団でした。

雇用契約には給金、糧食、戦利品の分配、さらには捕虜の身代金の取り扱いまで記載され、現代の就業規則よりシビアに設計されていました。

彼らの強みは熟練度と組織力
パイクを密集して使う戦術や攻城戦のノウハウ、行軍・野営の方法まで共有され、即戦力として頼られました。
高コストでも各国が雇いたがったのは、この「経験の蓄積」があったからです。

装備も比較的安定していて、ブリガンディンや兜、長槍を揃えられました。
さらに“ドッペルゾルドナー”と呼ばれる重装兵は特別手当を受けていました。
彼らは通常の兵士より危険な最前線に配置され、二倍の給与(ドッペル=二重)をもらう代わりに命がけの任務を担っていたのです。

このように部隊内でも給与や任務の差が明確に存在しました。

貧しい兵士と裕福な兵士の装備差

当時の武器や防具はとても高価でした。

労働者の日給が数ペンスの時代に、良質な剣は数シリング、鎖帷子は年収に匹敵する額。
貧しい兵士は農具を改造した武器や安価な槍に頼り、裕福な兵士は防具を固め、剣や予備武器を複数持てました。

16世紀のランツクネヒトが極彩色の衣装を誇示したのは、ただの派手好きではなく「自分は稼いでいる」というサイン。

財力と戦利品が外見に反映され、それ自体が雇い主へのアピールにもなっていました。

捕虜になったときの扱い

戦場で捕まったときの運命も、身分で大きく分かれました

騎士や貴族は高額の身代金を期待できたため丁重に扱われ、交渉の材料として生かされました。
いわば「投資対象」だったのです。

一方で農民や下級兵士は値打ちが低く、解放される場合もあれば、徴用や虐殺の対象になることもありました。
特に城壁突破後の「ノー・クォーター(慈悲なし)」は有名で、降伏しても助からないことが多かったのです。

戦場が映す“社会の残酷な鏡”

  • 徴兵された農民兵は、自前の装備で訓練も足りず、戦場では縁の下の力持ちに徹するしかなかった。
  • 傭兵団の兵士は、契約と給金に守られたプロ。
    経験と技術で地位を築き、戦場でも一目置かれる存在。
  • 装備の差はそのまま生存率の差。
    派手な衣装や重装備はただの見栄ではなく、“俺はまだ生き残れる”という現実の証明だった。
  • 捕虜の運命はサイコロのように身分で決まる。
    貴族は高額の身代金で生き延び、農民兵は命の保証すらなかった。

要するに、中世の戦場は“勇気”ではなく“社会のルール”が人の生死を決める場所でした。

守る力がない者ほど薄い鎧を与えられる
――そんな残酷な逆説が現実だったのです。
そしてこの構図は、現代の私たちの世界とも無縁ではありません

契約や格差の仕組みをどう乗り越えるか、そのヒントは彼ら歩兵の物語の中に眠っています。

歴史を知ることは、今を生きる自分の鎧を見直すことでもあるのではないでしょうか。
よければ今一度考えてみて下さい。

4コマ漫画「歩兵の格差」

ABOUT ME
佐藤直哉(Naoya sato-)
佐藤直哉(Naoya sato-)
ブロガー/小説家
「なぜ?」を追いかけるのが好きで、歴史や文化、暮らしの中の雑学を集めています。
肩の力を抜いて読めるけれど、ちょっと人に話したくなる
——そんな記事をお届けします。
気楽にのぞいてみてください。
記事URLをコピーしました