送った電波が数秒後に戻ってきた──1928年に観測された「長遅延エコー」の謎
はじめに

「今の、また聞こえなかったか?」
1928年。
無線の実験中、
送った信号と同じような音が、
数秒たってからもう一度聞こえてきました。
3秒後。
8秒後。
中には、
さらに長く遅れるものもありました。
この現象は、
LDE(長遅延エコー)
と呼ばれます。
簡単に言えば、
送った電波が、かなり遅れてもう一度聞こえる現象です。
「なぜ、こんなに遅れる?」
研究者たちは、
原因を探し始めました。
※本記事は筆者個人の感想をもとにエンターテインメント目的で制作されています。
また、本文中の人物名については、文章を読みやすくするため敬称を省略しています。
ただの反射では、少し遅すぎる

電波は、
上空の電離層で反射することがあります。
電離層とは、
電波を曲げたり反射させたりすることがある、
地球上空の領域です。
だから、
遅れて聞こえること自体はおかしくありません。
ただ、
数秒も遅れると話が変わります。
電波は、
光とほぼ同じ速さで進みます。
3秒遅れるだけでも、
かなり長い距離を進んだことになります。
研究者たちは、
地球磁場の影響で遠回りしたのではないか?
上空に特殊な電波の通り道ができたのではないか?
いくつもの説を考えました。
それでも、
長い遅れのすべてを簡単に説明できたわけではありません。
そんな中、
1960年。
少し変わったアイデアが登場します。
「もし、誰かが返していたら?」

スタンフォード大学のロナルド・ブレイスウェルは、
こんなことを考えました。
もし高度な宇宙文明があるなら、
別の星へ無人探査機を送り、
そこで文明が電波を使い始めるまで待つ。
そして電波を受け取ったら、
そのまま送り返す。
そうすれば、
「こちらは君たちに気づいている」
と知らせられるかもしれない。
あくまで仮説です。
しかし約10年後、
この考えをLDEに当てはめる人物が現れました。
スコットランドの作家、
ダンカン・ルナンです。
数字を並べたら、星に見えた

ルナンは、
1920年代に記録されたLDEのデータを調べました。
そこには、
「何秒遅れて聞こえたか?」
という数字が並んでいました。
その数字をグラフにすると、
ルナンには、
星の並びのように見えたのです。
さらに、
うしかい座の方向と関係しているのではないか?
と考えました。
ただし、
現在の星の位置とは少し合いません。
そこで、
星の位置を昔までさかのぼってみる。
するとルナンは、
およそ13,000年前なら合うのではないか?
と考えました。
そして、
さらに大胆な説へ進みます。
LDEは自然現象ではなく、
地球の近くにいる異星文明の無人探査機が、電波を送り返していたのではないか?
1973年、
ルナンはこの考えを発表しました。
数秒遅れて聞こえただけの電波は、
ついに、
13,000年前の宇宙探査機
という話にまで広がったのです。
この説は後に、
地球を周回しているとされる謎の人工物、
「ブラックナイト衛星」
の都市伝説とも結びついていきました。
ところが、本人が説を撤回した

話はここで終わりません。
その後、
ルナンが使った古いLDEデータの一部に、
精度の問題があることが分かってきました。
星図として読む方法にも、
無理がある部分が見つかります。
そして1976年。
ルナンは、
当初の解読を撤回しました。
つまり、
LDEが異星文明の探査機から返された電波だと確認されたわけではありません。
その後もLDEについては、
電離層や地球磁場など、
自然現象として説明する研究が続いています。
ただ、
昔に記録されたすべてのLDEが、
一つの原因できれいに説明されたわけでもありません。
だからこそ、
この話は長く残りました。
最後に

1928年。
研究者たちが知りたかったのは、
「なぜ、この電波は数秒遅れて聞こえたのか?」
ただそれだけでした。
けれど、
はっきりした答えが出ないまま時間がたつと、
そこに別の説が加わっていきました。
異星文明。
無人探査機。
13,000年前。
そして、
ブラックナイト衛星。
最初は、
電波の原因を調べていただけです。
それがいつの間にか、
宇宙人が地球を見ているかもしれない話にまで変わっていました。
分からないことが一つ残るだけで、
人の想像は、ずいぶん遠くまで広がるようです。

