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ミステリーサークルは誰が作ったのか? 板と縄が宇宙人に化けた夜

佐藤直哉(Naoya sato-)
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はじめに

朝、畑へ出た農夫が足を止めました。

「おい、ちょっと来てくれ」

呼ばれた家族が、眠そうな顔でやってきます。

「どうしたの?」

農夫は何も言わず、畑の奥を指さしました。

麦が大きな円を描いて倒れています。

その隣にも円。

そこから細い線が伸び、別の模様へつながっていました。

「昨日、こんなものあった?」

「あるわけないだろ」

二人は畑の中へ入ろうとして、また足を止めます。

「誰かが作ったのかな?」

「一晩で?」

「機械を使えば……」

「でも、音なんてしなかったぞ」

やがて、その図形は空から撮影されました。

写真には、地上からでは分からなかった巨大な模様が写っていました。

「宇宙船の跡じゃないか?」

「未来からの暗号かもしれない」

「いや、まだ知られていない自然現象だ」

見る人が増えるたび、答えも増えていきました。
けれど、その夜に畑へ来ていたのは宇宙人ではありません。

板と縄を抱えた、ごく普通の人間でした。

※本記事は筆者個人の感想をもとにエンターテインメント目的で制作されています。

悪魔から宇宙人へ

1678年、イングランド。

農夫が草刈り人と向き合っていました。

「この畑なら、この金額です」

「高すぎる」

「では、自分で刈りますか?」

農夫は腹を立て、吐き捨てました。

「それなら、悪魔に刈らせたほうがましだ」

その夜。

畑の向こうが、炎のように赤く光ったといいます。

翌朝、農夫が恐る恐る見に行くと、草はきれいに刈られていました。

「まさか……本当に来たのか?」

当時のパンフレットには、鎌を振るう悪魔の姿が描かれました。

時代が進んだ1880年。

今度は、円を描くように倒れた穀物が見つかります。

「また悪魔でしょうか?」

畑を調べた人物は、首を振りました。

「いや。風が渦を巻いたのだろう」

悪魔は追い出され、犯人は旋風になりました。

そして1966年、オーストラリア。

農場主が、湿地から円盤のような物体が飛び上がるのを目撃します。

「今のを見たか?」

人々が駆けつけると、葦が円形に倒れていました。

「風の跡じゃない」

「では、何だ?」

誰かが空を見上げます。

「宇宙船の着陸跡だ」

畑に残ったのは、どれも奇妙な円でした。

昔の人は、そこに悪魔を見ました。
科学が広まると、原因は風になりました。
そして空に未知の飛行物体が語られるようになると、人々はそこに宇宙船の跡を重ねました。

変わっていったのは円ではありません。

円の向こうに何を見るか。

それを決めていたのは、人間のほうでした。

二人の男が宇宙人を作る

1970年代末、イングランド。

ある夜、パブで二人の男が話していました。

ダグ・バウアー氏とデイブ・チョーリー氏です。

「空飛ぶ円盤の跡って、本当に作れると思うか?」

「円なら、俺たちにも作れるだろ」

きっかけは、ただの冗談でした。

二人は夜の畑へ向かいます。

持っていたのは、板と縄だけ。

「ここを中心にしよう」

「縄を伸ばせば、きれいな円になる」

中心に印をつける。

縄で距離を測る。

板で麦を押し倒しながら歩く。

作業は単純でした。

「これで誰か気づくかな?」

二人は半信半疑で帰りました。

翌朝。

新聞には、自分たちが作った円の写真が載っていました。

「謎の巨大な円が出現」

「宇宙船の着陸跡か」

二人は顔を見合わせます。

「……宇宙人の仕業になってるぞ」

最初は笑い話でした。

しかし、その反応が面白くなり、二人は再び夜の畑へ向かいます。

円は増えていきました。

ある夜、バウアー氏が家へ帰ると、妻が待っていました。

「最近、毎晩どこへ行っているの?」

「言っても信じないと思う」

「まさか、ほかの女性と会っているの?」

「違う」

「じゃあ、何?」

バウアー氏は答えました。

「宇宙船の跡を作っている」

妻が信じられなかったのは、夫の行動ではありません。

その理由でした。

1991年。

二人はついに名乗り出ます。

記者の前で、板と縄を使って円を作りました。

「これで作れるのか……」

それまで、多くの人が「人間には不可能だ」と考えていた図形でした。

しかも過去には、二人が作ったサークルを本物の未知現象だと判断した研究者もいました。

二人が作ったのは、ただの円ではありません。

人間が作ったものを、人間が見抜けない。

そんな奇妙な状況まで作り出してしまったのです。

正体が分かっても消えない

1991年、二人が名乗り出ました。

これで騒ぎも収まる。

そう思われました。

ところが、翌年も畑に図形が現れます。

「もう、ただの円では驚かれないぞ」

「では、もっと複雑にしよう」

制作者たちは、円をつなげました。

渦巻きを加えました。

数学の図形まで畑に描きました。

「今度は人間に作れるかな」

宇宙人の技術が進歩したように見えます。

実際に進歩していたのは、夜の畑へ入る人間の腕でした。

そして2001年。

英国のチルボルトン天文台近くに、奇妙な図形が現れます。

「これは、アレシボ・メッセージじゃないか?」

1974年、人類は電波望遠鏡から宇宙へメッセージを送りました。

人間の姿。

DNA。

太陽系。

それを少し変えた「返事」のような模様が、畑に描かれていたのです。

「宇宙から返信が来た」

そう思わせるには、図形だけでは足りません。

置く場所も必要でした。

普通の畑なら、奇妙な模様です。

天文台の隣なら、宇宙からの返事になります。

作者は麦だけでなく、見る人の想像まで使って作品を完成させたのです。

最後に

長いあいだ、人々は畑に残された模様を見上げました。

「誰が作ったのか?」

「何を伝えようとしているのか?」

答えを探し続けました。

しかし、そこにあったのは宇宙から届いた暗号ではありません。

夜中に板を持って歩いた、人間の遊び心でした。

けれど、不思議なのはここからです。

作った本人たちは、ただ円を描いただけでした。

そこへ宇宙船を見つけた人。
未来からの警告を感じた人。
未知の知性の存在を信じた人。

同じ模様を見ても、受け取ったものは人によって違いました。

ミステリーサークルが残した本当の謎は、畑に隠されていたものではありません。

なぜ人間は、ただの円を見て、その向こう側に何かを探したのか。

板と縄で作られた小さな仕掛けは、いつの間にか人類の想像力を映す大きな鏡になっていたのかもしれません。

ABOUT ME
佐藤直哉(Naoya sato-)
佐藤直哉(Naoya sato-)
ブロガー/小説家
文章を書くことを楽しむ自称・小説家です。
歴史や文化、日々の暮らしに潜む雑学を題材に、無駄雑学などの小噺を発信しています。
どうぞ、ふらりと覗いてみてください。
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