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ホラーの起源とは?人類はいつから“怖い話”を語ってきたのか?

佐藤直哉(Naoya sato-)
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はじめに

「怖い話」は誰が作ったのか?

夜中に家の中で物音がすると、つい耳をすませてしまうことがあります。

ガタッ。

自分
「……今の音なんだ?」

3秒後。

自分
「泥棒か?」

10秒後。

自分
「いや待て。幽霊か?」

30秒後。

自分
「そろそろ来るか……?」

そして確認すると――

猫。
もしくは自分が置いた荷物。

人間、想像力だけは異常に働きます。

実はこの「分からないから勝手に怖い理由を考える」という行動、現代人だけではありません。

何千年も前の人たちも同じでした。

雷が落ちる。
病気になる。
夜の森で物音がする。

すると誰かが言います。

「悪霊では?」

すると別の誰かが言います。

「怪物かもしれん」

さらに別の誰かが言います。

「いや、その怪物を操る魔術師では?」

話がどんどん盛られていく。
こうして生まれたのが、「ホラー」です。

📌 ホラーの起源は大きく2つあります

・「ホラー」という文学ジャンルの誕生
・人類が恐怖を語り始めた文化の誕生

つまりホラーの歴史とは、

「人類が何か分からないものを見つける」

「勝手に怖くする」

「みんなに話す」

を数千年続けてきた歴史でもあるのです。

※本記事は筆者個人の感想をもとにエンターテインメント目的で制作されています。

ホラーというジャンルはいつ生まれたのか?

まず、現代のホラー小説やホラー映画につながる「ジャンルとしてのホラー」から見てみましょう。

その出発点としてよく挙げられるのが、1764年に出版された、

『オトラント城奇譚』

です。

この作品には、古い城、謎めいた出来事、超自然的な現象、不気味な雰囲気が登場します。

つまり、現在のホラーでよく見る要素が、すでにかなり揃っていたのです。

✅ 古城
✅ 超自然現象
✅ 不気味な空気
✅ 説明できない恐怖

この流れから考えると、

「ホラーというジャンル」は18世紀後半に形を持ち始めた

と言えます。

ただし、これはあくまで文学ジャンルとしての始まりです。
人間が怖い話を語る文化は、それよりもずっと前から存在していました。

人類最古級のホラーは神話だった

怖い話の原型を探していくと、古代メソポタミアの物語にたどり着きます。

代表的なのが『ギルガメシュ叙事詩』です。

紀元前2000年頃にはすでに語られていたとされる、とても古い物語です。

そこには、

怪物フンババ
天の牡牛
冥界
死への恐怖

といった要素が登場します。

もちろん、これは現代の意味でのホラー小説ではありません。

けれども、「人間の力ではどうにもならない存在」「死の恐怖」を描いている点では、ホラーの原型に近いものがあります。

昔の人々にとって、世界は今よりずっと説明できないことだらけでした。

病気、災害、死、夜の闇。

それらをただ怖がるだけでなく、怪物や神々の物語として語ることで、人々は恐怖に形を与えていたのです。

古代人は“悪霊で悪霊を追い払っていた”

古代メソポタミアには、パズズという悪霊がいました。

その姿は、犬やライオンのような顔に鋭い牙を持ち、痩せた人間の体にはうろこのような皮膚があり、背中には翼が生え、サソリの尾まで備えた非常に不気味なものです。
にもかかわらず、人々はこのパズズの像を護符として使っていました。

なぜ、悪霊の像をわざわざ身近に置いたのでしょうか?

理由は、

もっと危険な悪霊を追い払うため

です。

つまり、怖い存在を遠ざけるために、別の怖い存在の力を借りようとしたのです。

現代風に言えば、

「怖い番犬を玄関に置く」

ような感覚に近いかもしれません。

あるいは、

「危ない相手に対抗するため、もっと強そうな用心棒を雇う」

と言ってもいいでしょう。

人類最古級のホラー対策は、
「さらに怖いものを味方につける」
という発想。

恐怖から逃げるのではなく、恐怖を利用して恐怖に対抗する。
この考え方は、かなり人間らしいものがあります。

古代ローマにも事故物件怪談があった

幽霊屋敷の話も、実はかなり古くから存在します。

古代ローマの著述家プリニウス氏は、現代の怪談にもよく似た話を書き残しています。

ある家では、夜になると鎖を引きずるような音が聞こえました。
住人たちは恐れて逃げ出し、その家には誰も住みたがらなくなります。

そこで哲学者アテノドロス氏が、その家に入居します。
すると夜、本当に鎖を引きずる幽霊が現れました。

幽霊は庭の一角へ彼を導きます。

翌日そこを掘り返すと、遺骨が見つかりました。
そして遺骨をきちんと埋葬すると、怪異は収まったのです。

幽霊屋敷事件の流れ

① 夜に鎖の音がする

② 住人が逃げ出す

③ 幽霊が現れる

④ 遺骨が見つかる

⑤ 埋葬すると怪異が消える

これはもう、現代の「事故物件怪談」にかなり近い構造です。
2000年近く前の人々も、今と似た形で幽霊話を語っていたのです。

ホラーは最初から“演出上手”だった⁉

近代ホラーの出発点とされる『オトラント城奇譚』には、もう一つ面白い点があります。

それは出版時の見せ方です。

作者ホレス・ウォルポール氏は最初、この作品を、

「古いイタリア写本を翻訳したものです」

という設定で世に出しました。

つまり、最初から「本当に昔から伝わっていた話かもしれない」と思わせる形を取っていたのです。

ところが後になって、作者は、

「実は自分が書きました」

と明かします。

今で言えば、

「古代文書を発見しました」

という宣伝に近いかもしれません。

ホラーは、ただ怖い出来事を並べるだけではありません。

読者に、

「これは本当にあった話なのでは?」

と思わせる演出も大切にしてきました。

近代ホラーは、誕生した時点ですでに“見せ方”まで工夫されていたのです。

科学は新しいホラーを生んだ

19世紀になると、ホラーの恐怖は少し変化します。

その代表が『フランケンシュタイン』です。

この作品で本当に怖いのは、見た目の怪物だけではありません。

むしろ中心にあるのは、

「人間が生命を作ってしまう」

という恐怖です。

科学が発展すると、人間にできることは増えていきます。

しかし同時に、

「本当にそこまでしていいのか」

という不安も生まれます。

本当に怖いもの

科学の暴走
人間の傲慢さ
生命を作ることへの不安

『フランケンシュタイン』は、怪物を通して科学時代の恐怖を描いた作品でした。

ホラーは時代遅れの迷信ではありません。
その時代の人々が抱えていた不安を、怪物や事件の形に変えて映し出すものなのです。

吸血鬼が象徴したもの

吸血鬼も、ただ血を吸う怪物として生まれたわけではありません。

1819年の『吸血鬼』
そして1897年の『ドラキュラ』

これらの作品に登場する吸血鬼には、当時の人々が抱えていた不安が重ねられています。

たとえば、

外国から来る見知らぬ存在への不安
病気が広がることへの恐怖
社会の変化
古い価値観が崩れていく感覚

吸血鬼は、人間の血を吸う怪物であると同時に、社会の奥にある不安を背負った存在でもありました。
だからこそ、ドラキュラ伯爵は今も消えません。
時代が変わっても、人間はどこかで「自分たちの世界が脅かされること」を恐れているからです。

吸血鬼は、その不安に姿を与えた怪物だったのです。

ホラーの本当の起源

ここまで見てくると、ホラーには一つの共通点があることが分かります。

📌 怪物
📌 悪霊
📌 幽霊
📌 吸血鬼

これらはすべて、人間が説明できなかったものから生まれています。

病気。
死。
災害。
夜の闇。
知らない土地。
突然起きる不幸。

人間は、理解できないものをそのまま放っておくことが苦手です。

だから名前を付けます。
姿を与えます。
物語にします。

そうすることで、ただの不安は「語ることができる恐怖」に変わります。

ホラーとは、分からないものに形を与える文化です。

怖い話は、人間が恐怖に飲み込まれないために作ったものでもあったのかもしれません。

最後に

ホラーの起源は、単なる娯楽ではありませんでした。

それは、

人間が暗闇を理解しようとした試み

だったのです。

古代の人々は、病気や死や災害を前にして、今よりずっと多くのことを説明できませんでした。
だからこそ、そこに悪霊や怪物や幽霊の姿を見ました。

現代では、科学によって多くのことを説明できるようになりました。
それでも、完全に不安が消えたわけではありません。

夜中の物音にふと反応してしまう。
誰もいない場所に気配を感じる。
先の見えない未来に怖さを覚える。

形は変わっても、

「分からないものは怖い」

という感覚だけは残り続けています。

ホラーの歴史とは、怪物の歴史ではありません。
人類が恐怖に名前を付け、物語に変えながら向き合ってきた歴史なのかもしれません。

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佐藤直哉(Naoya sato-)
佐藤直哉(Naoya sato-)
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文章を書くことを楽しむ自称・小説家です。
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