兵士たちの肖像
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兵士は戦うだけじゃない──中世歩兵の“副業”事情

佐藤直哉(Naoya sato-)
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はじめに

槍の先より、鍬の刃が似合う日もある

中世ヨーロッパと聞いて、まず思い浮かぶのは
──重厚な鎧を着込んだ騎士が馬上から敵を睨み、歩兵たちが槍と盾で押し合いへし合い

……そんな戦場のイメージでしょう。

ですが今回は、その“戦ってない時間”に注目します。

実は、歩兵たちはかなり多忙だったんです。
農業鍛冶スパイ活動まで……彼らの“副業ライフ”を覗いてみましょう。

※本記事はエンターテインメント目的で制作されています。

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戦争はフルタイムじゃない

中世戦士の働き方改革

まず大前提として、中世の戦争は“たまにしか起きないイベント”です。
農繁期には兵士も畑に戻り、収穫が終わったらまた戦場へ、なんてサイクルが当たり前。
現代のフリーランスのような、季節労働的な戦士生活だったんですね。

つまり「兵士=本業、副業=農民」ではなく、「農民(本業)+兵士(時々)」というパターンが主流。

戦争がコンスタントに発生しない以上、他に仕事がないと生きていけません。

鍛冶屋? 農夫?

いや、俺、歩兵です

戦場で槍を振るった後、その手で鍬を握る。

これが中世歩兵のリアルです。

農民出身の歩兵は、戦いが終われば村に戻って耕作再開。
春は種まき、夏は草刈り、秋は収穫
──そして冬は戦争か鍛冶屋

そう、冬は副業シーズン

村の鍛冶場では、剣も農具も馬の蹄鉄もまとめて修理。
器用な兵士は鍛冶職人として一目置かれ、手先の不器用な兵士は薪割りか雪かき要員に。

中でも野戦鍛冶(キャンプスミス)は貴重な存在で、戦地での武具修理を一手に引き受けていました。

兵士の命は道具の整備にかかっていたと言っても過言ではありません。

歩兵の“裏の顔”

工兵・スパイ・斥候

一部の歩兵はさらに多才です。
投石機を組み立て、堀を掘り、城壁を爆破。
……そう、彼らは工兵でもありました。

「戦う前に準備せよ」が中世の基本戦術。
歩兵たちは攻城兵器の建設、塹壕掘り、敵の動向調査と、戦闘以外の任務もバリバリこなしていたのです。

さらに特筆すべきは“スパイ業”
敵の陣地にこっそり潜入し、食糧の在庫や兵の数を数える。
まさに命がけの「情報収集」ですね。

歩兵は目立たない服装と地元の言葉で、敵地に自然に溶け込む諜報員でもありました。

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キャンプは一つの“移動都市”だった

テントの数だけ、職業があった

軍営地に目を向けてみましょう。

そこには戦士だけでなく、商人、料理人、洗濯婦、医者、そしてエンタメ要員までがひしめき合っていました。

この“従軍者”たちが形成するミニ経済圏では、歩兵も物資の運搬や商売、雑務に精を出していたのです。
特に計算が得意な者は帳簿係になったり、読み書きができる者は伝令や書記を務めたりと、非戦闘のスキルも重要な「武器」でした。

中には弓矢を作って売るフレッチャー(矢職人)に転身する者も。
生活のためなら副業どころか転職も辞さない。

現代のサバイバル転職術は、中世ですでに行われていたのです。

歩兵とは、“肩書きが多すぎる人たち”だった

つまり、歩兵とは「なんでも屋」でした。
農夫であり、兵士であり、鍛冶屋であり、スパイであり、大工であり、帳簿係

この多重アイデンティティは、生き抜くための合理的選択。
一つのスキルで一生食っていけるほど、中世ヨーロッパは甘くなかったのです。

副業を持つのではなく、“副業が歩兵だった”という時代感覚こそが当時のリアルです。

最後に

歴史の向こう側にある「生活のにおい」

中世の戦争を描くとき、よく血と泥と火薬の匂いが語られます。
でも、その向こうには確かに「生活のにおい」があった。

歩兵とは、ただ戦う者ではなく、日々の暮らしを成り立たせるために、さまざまな役割をこなす生活者でした。

きっと今の私たちと同じように、心のどこかで「できれば戦場には行きたくないな」と思いながら、今日も畑を耕し、武器を磨き、街で情報を集めていたのでしょう。

生きることが戦いだった時代の、“本当の戦士”の姿。
そんなリアルを想像してみると

──ちょっと彼らに親近感が湧いてきませんか?

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4コマ漫画「歩兵のキャリア相談」

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佐藤直哉(Naoya sato-)
佐藤直哉(Naoya sato-)
ブロガー/小説家
小説を書いていたはずが、いつの間にか「調べたこと」や「感じた違和感」を残しておきたくなりました。
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「なんかどうでもよさそうなのに、気になる」
──そんな話を集めて発信しています。
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