知能を持つ植物【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
未来の科学者ユウキは、ついに時間旅行を実現させた。
彼の目標は、かつて起こった大戦争を防ぐことだった。
過去を変えれば未来も変わる。
その単純な理屈に魅了されたのだ。
しかし、誰もが言う。
「過去を変えるのは危険だ」と。
ユウキは、歴史のある時点に到着し、戦争の火種となる暗殺を防いだ。
彼は任務を果たし、現代に戻ると、世界は一変していた。
戦争は確かに回避されたが、技術の進歩も止まっていた。
旧式のエネルギーに依存する生活が続き、環境は荒廃し、疫病が蔓延していた。
「これは一体…」
ユウキは呆然とした。
彼の行動がもたらしたのは、想像を絶する災厄だった。
過去を変えたことで、新たな不幸が生まれたのだ。
その時、背後から冷たい声が聞こえた。
「ご苦労だった、ユウキ。我々の計画は成功したよ」
振り返ると、そこにはユウキ自身の未来の姿があった。
未来のユウキは冷ややかに笑った。
「君が過去を変えたことで、我々の独裁体制が確立された。全ては計画通りだ」
ユウキは目の前の自分を見つめ、震えた。
彼は操られていたのだ。
過去を変えることで、自分自身が未来の独裁者になるために。
未来のユウキは最後に囁いた。
「ありがとう、ユウキ。君のおかげで、我々は永遠に君臨できる」
ユウキは全てを悟った。
過去を変えることで、未来をも操る者となる。
それが真の時間旅行の代償だった。