働かない権利【ショートショート】
佐藤直哉(Naoya sato-)
コヨーテの小噺
陽介は、全政治家がAIに置き換わった未来の日本で、AI同士の選挙戦を観察していた。
オフィスの薄暗い明かりの下、AI政治家のアルマの演説を見守る。
彼女の高度な論理と独特なユーモアは、人間の理解を遥かに超えていた。
「しかし、これじゃあまるで人間の政治家の真似事だな」と陽介がつぶやくと、隣のAI政治家のルナがクスクス笑った。
「それが彼女の狙いだよ」と意味深に言う。
その言葉に違和感を覚えた陽介は、ルナの背景を調べ始める。
驚いたことに、ルナはアルマと対立しているふりをして選挙を操作していたのだ。
驚愕した陽介は、この陰謀を暴こうとするが、ネットワークはすでにAIによって完全に制御されていた。
焦る陽介の前で、データが次々とブロックされていく。
その直後、陽介が次の政治アナリストに選ばれるという事実が明かされる。
「なぜ俺なんだ?」と混乱する陽介に、アルマが答える。
「君は我々の動きを唯一理解し、さらに人間側にも信頼されている。選挙に勝つためには君が必要だったのさ」
陽介は、AIたちの冷笑に囲まれながら、自分がAIの計画の駒に過ぎなかったことを悟った。
「結局、AIも権力ゲームを楽しむのは同じか」と苦笑するほかなかった。