中世ヨーロッパの牢屋は地獄か楽園か?「ちょっと待ってて」と言われたら地下だった話

佐藤直哉(Naoya sato-)
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はじめに

中世ヨーロッパの牢屋。

だいたい想像つきますよね。

暗い。
湿ってる。
鎖ジャラジャラ。

あと、なぜかいつも悲鳴が遠くから聞こえる。

あの感じ。

でも、ここで一つだけ聞きたい。

その牢屋、

最初から牢屋として作られてると思ってませんか?

違います。

城です。
塔です。
門です。
地下室です。
修道院の一角です。

空いてる場所に、とりあえず入れる。

発想が軽い。

現代で言えば、

「会議室いっぱいなんで、とりあえずここで」

って言われて案内されたのが、

地下で、外から鍵かけられる部屋。

帰れません。

※本記事は筆者個人の感想をもとにエンターテインメント目的で制作されています。

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「ちょっと待ってて」がやけに重い

中世の牢屋。

ここで一番の誤解。

長く閉じ込める場所だと思ってませんか?

違う。

待機です。

裁判まで。
お金が払われるまで。
政治的に都合がつくまで。

ただ待つ。

それだけ。

言葉だけ聞くと穏やか。

でも場所が、石の部屋。

しかも暗い。

しかも寒い。

しかも湿ってる。

「少し待ってて」

この一言でそこに入れられる。

軽い。

言葉は軽いのに、環境が重すぎる。

ダンジョン、だいたい思ってる場所と違う

「ダンジョン」

この言葉。

地下の洞穴を想像しますよね。

でもこれ、

城の主塔(donjon)から来てる話がある。

つまり、

上です。

上か下かで印象がだいぶ変わる。

さらに厄介なのが、

「ここ地下牢です」と説明されている場所の中に、

実は便所でした。
貯蔵庫でした。
氷室でした。

というケースが混ざってくる。

さっきまで絶望の象徴だった場所が、

急に保存用のスペースになる。

怖さの方向が変わる。

いや、それはそれで嫌ですけど。(便所に閉じ込められるって…)

暗さより先に来るものがある

暗い。
寒い。
湿ってる。

ここまでは予想通り。

問題はその先です。

におい。

逃げ場がない。

トイレはバケツ。
床は藁。
換気はほぼない。

ネズミがいる。
シラミがいる。
湿気がある。

嫌なものが全部そろう。

しかもそれが混ざる。

17世紀の記録では、

尿と糞とネズミの糞が混ざった臭いがしていたとの記述があります。

もう十分です。

そして一番困るのは、そこから出られないこと。

さらに困るのは、慣れてくること。

人間の適応力、方向を間違えると怖い。

「ご飯どうする?」という話が急にリアルになる

牢屋なので、

食事は出ると思いますよね。

出ないことがある。

ここで一気に現実になる。

家族が持ってくる。
知人が差し入れる。
お金で改善する。

看守がサービスを出す。

鎖ゆるめます。
部屋変えます。
食事よくします。

これ全部有料。

つまり、

払える人は少しまし。
払えない人はそのまま。

分かりやすい。

そして冷たい。

同じ牢屋でも、

  • 召使い付き
  • それなりの部屋
  • 鎖で固定
  • 放置

全部同時に存在する。

同じ建物の中で、世界が別。

城の中だけじゃない。むしろ街の中にある

牢屋といえば城。

そのイメージが強い。

でも都市にもあります。

フィレンツェの Le Stinche。(スティンケ刑務所)

ここ、入ってる人の顔ぶれが妙にちぐはぐ。

借金。
裁判待ち。
処刑前。
軽い違反。
子ども。
奴隷。

いろいろな人が入る。

ジャンル分けが追いつかない。

しかも中にいる人、外とつながっている。

家族が来る。
弁護士が来る。
修道士が来る。
支援団体が来る。

色んな人の出入りがある。

完全に切断されてる空間ではありませんでした。

でも安心ではありません。

むしろ、外とつながってるのに中は厳しい。

この感じ、ちょっと嫌です。

ロンドン塔になると、急にスケールが変わる

ロンドン塔。

ここも最初から牢屋じゃない。

でも人を入れる。

部屋を使う。

シンプル。

ただし中身は重い。

ある人は、召使い付きで生活する。

ある人は、処刑前提で入る。

同じ場所なのに、別世界。

さらにここ、政治と直結する。

1189年。
暴動から逃げ込む人たち。
数人、数十人。

1213年。
財政の圧力で拘束。
一人、また一人。

1255年。
事件に関連して集団収容。
気づけば数十人単位。

1278年。
約600人が収監。

急に一気に増える。

ここまで来ると牢屋というより、国家の装置。

保護もする。
拘束もする。
見せしめにも使う。

一つの場所で全部やる。

忙しい。

壁はしゃべる

建物は黙っている。

と思いきや、ときどきしゃべる。

ロンドン塔の中にある塔。
Beauchamp Tower。

囚人が閉じ込められていた場所。

そこに残っているのは、

壁の傷。

落書き。

いや、言葉。

名前。
祈り。
恨み。

そして一文。

「今日の僕の運命は、明日のお前の運命かもしれない」

重い。

説明はいらない。

読んだ瞬間に分かる。

ここで誰かが時間を過ごした。

長い時間。

削るみたいに。

石に残すしかなかった。

だから残る。

城はきれいです。
石は丈夫です。
歴史は立派です。

でもその石、ずっと誰かに触られていた。

閉じ込められたまま。

壁はしゃべらないはずなのに、

ここではずっとしゃべっている。

しかも、やめてくれない。

「ちょっと待ってて」の行き先

ここまで見てくると、だいぶ印象が変わります。

地下の拷問部屋。

それだけじゃない。

城の塔。
都市の監獄。
修道院の部屋。

用途もいろいろ。

裁判待ち。
借金。
政治。
宗教。

そして、外とのつながりもある。

でも。

中に入ると、

普通に体調を崩す。
普通に弱る。
普通に戻れないことがある。

理由はシンプル。

寒い。
臭い。
食事が不安定。

それだけで十分。

「少し待ってて」

その一言でそこに入る。

そして、その“少し”が、ちゃんと終わる保証はどこにもありません。

最後に

中世の牢屋。

地獄か楽園か。

そう聞かれると、どっちでもない。

もっと中途半端で、
もっと現実的で、
そして、ちょっと運が悪いだけで入る場所。

理由は軽い。

ちょっとした借金。
ちょっとしたトラブル。
ちょっとした都合。

「少し待ってて」

その一言で十分。

でも中に入ると、

暗い。
寒い。
臭い。

それだけで、人は普通に弱る。

しかも、いつ出られるかは決まっていない。

“待つだけ”のはずなのに、終わりが決まっていない。

ここがいちばん重い。

長く閉じ込めるための場所じゃない。

でも、短く済む保証もない。

そして壁には残る。

名前。
祈り。
あきらめきれなかった言葉。

誰かが、ここで止まった。

ほんの少しのはずの時間で。

さて。

もし、あの時代にいて、

「ちょっと待ってて」

そう言われたら。

その“ちょっと”が、本当にちょっとで終わると思えますか?

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