ゲームの話
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なぜラスボスの部屋は毎回あんなに広いのか──あなたが理不尽に殺されず、気持ちよく勝つためのゲーム設計

佐藤直哉(Naoya sato-)
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はじめに

ゲームを遊んでいて、ほぼ全員が一度は思ったことがあるはずです。

「……広すぎない?」

いや、冷静に考えてみてください。
さっきまで幅90センチくらいの通路を、肩をすぼめて、半分不審者みたいな姿勢で進んでいたんですよ。

それが突然、天井は高い、柱は遠い、床はやたらと立派。
敵が出てこなくて落ち着かない。
完全に“事件が起きる前提の部屋”

そうです。
ラスボスの部屋です。

広い。
とにかく広い。
広すぎて、戦闘開始前なのに脳が先に現実逃避を始める。

「ここ、何用の施設なんだろう?」
市民ホール?
体育館?
それとも結婚式の二次会会場?

しかも不思議なことに、こんな無駄に広い場所に限って、椅子もベンチも置いていない。
ただ広い。
休憩不可。
優しさゼロ。

……と、思いきや。

実はこの広さ、開発者の気まぐれでも、様式美でもありません。

ラスボスの部屋が広いのは、あなたがキレてコントローラーを置かないためであり、そして最後に「まあ負けたけど納得はしたな」と思わせたうえで、気持ちよく勝たせるためなのです。

※本記事は筆者個人の感想をもとにエンターテインメント目的で制作されています。

広さはサービス。まずは「理不尽」を消すため

ここで、さっさと結論を言ってしまいましょう。

ラスボスの部屋が広い最大の理由は、「公平さ」と「特別感」を同時に成立させるためです。

もう少し正直に言うと、

「訳の分からない死に方をさせて、プレイヤーをキレさせないため」

これに尽きます。

ゲームで一番ストレスが溜まる瞬間は何か。

何が起きたのか分からないまま死ぬ
画面がごちゃごちゃして原因が分からない
避けようがない攻撃を当然の顔で食らう

……はい、全員経験ありますね。
思い出しただけで、ちょっと眉間にシワが寄った人もいるはずです。

重要なのは、

難しいことは我慢できるけど、理不尽は我慢できない

という、人間としてとても健全な感情。

ここで広い部屋が効いてきます。

部屋が広いと、

攻撃の予備動作がちゃんと目に入る
床に出る危険範囲が把握できる
「あ、そっちに逃げれば助かるな」と考える余裕が生まれる

つまり、

「あ、今のは自分の判断ミスだな」と理解できる

これ、めちゃくちゃ大事です。

なぜなら、人は納得できると不思議なもので、

「よし、次こそ行ける」

と、もう一回挑戦してしまうから。

負けたのに腹は立たない。
むしろ燃える。

ラスボス部屋の広さは、
見た目を豪華にするためのものではありません。

それは、
プレイヤーに対して「ちゃんと説明しますよ」という、ゲーム側の最低限の礼儀なのです。

本当の敵はラスボスじゃない。壁とカメラだ

3Dアクションゲーム経験者なら、次のどれかには心当たりがあるはずです。

壁際に追い込まれた瞬間、画面が急に抽象画になる
カメラが天井や柱に引っかかり、急に芸術性を発揮し始める
自キャラの背中しか映らず、「今どこ?誰と戦ってる?」状態になる

敵は見えない。
自分も見えない。
なのに攻撃だけは正確に飛んでくる。

いや……怖い。

いや、ホラーゲームじゃないんですよ。
普通のアクションゲームです。

これはもう、ラスボスが強いとか弱いとか、その次元の話ではありません。
情報が届いていない

三人称視点のゲームでは、キャラクターだけでなく、
カメラも常に右往左往している存在です。

しかもこのカメラ、壁際が大の苦手。
空間が狭くなるほど逃げ場を失い、
結果として
「何も伝えない」
「何も映さない」
という、最悪の仕事放棄に走ります。

するとプレイヤー側では、

「見えないけど、たぶん当たった」

という、非常に不安な体験が発生する。

開発者としては、これは絶対に避けたい。

そこで考えます。

「……そもそも、壁に近づけなければいいのでは?」

はい、解決。

その答えが、広いラスボス部屋です。

広ければ、壁に押し付けられにくい。
カメラも余裕をもって動ける。
結果として、画面は落ち着き、状況がちゃんと伝わる。

つまりラスボス部屋が広いのは、
ボスを動かしやすくするためというより、
常に挙動不審なカメラを落ち着かせるための介護施設なのです。

ラスボスは盛られる。遠慮なく盛られる

ここで一度、深呼吸して考えてみてください。

ラスボスです。
最後です。
クライマックスです。

ここで地味だったらどうでしょう。

「え、これで終わり?」
「今までの冒険、何だったの?」

……そうなりますよね。
なります。
なるってことにして続けます。

だからラスボスは、容赦なく盛られます。
むしろ遠慮がなくなります。

だいたい、こうです。

体が大きい(もう画面に収まる気がない)
攻撃範囲が広い(避けろと言われても限界がある)
動きが速い(そのサイズで?)
形態が変わる(第二形態は義務)
床が爆発する(床の気持ちは考えない)
空から何か降ってくる(説明はない)

冷静に見ると、かなりやりたい放題です。

ここで想像してみてください。
これを、六畳一間でやったらどうなるか。

事故です。
不可抗力です。
保険が欲しい。

だからこそ、広い部屋が必要になります。

空間に余裕があることで、
プレイヤーは距離を取り、位置を選び、
「今は逃げる」
「ここで攻める」
を切り替えられる。

つまり、
自分で判断して戦っている感覚が生まれる

広さはただのスペースではありません。

それは余白であり、
余白は選択肢であり、
選択肢は、

「これは自分が選んで掴み取った勝利だ」

という感覚に、まっすぐつながっています。

なぜ広いだけで「ラスボス感」が出るのか

ここで少し、人間の話をしましょう。

人は、広大な空間に立つと、なぜか急に静かになります。

さっきまでおしゃべりだったのに、
足を踏み入れた瞬間、

「……あ、これ、騒いじゃいけないやつだ」

と本能がブレーキを踏む。

大聖堂、広い海、果てしない草原。

どれも共通しているのは、

「自分の存在が急に小さく感じる」

という感覚です。

理由はとても単純で、
自分より明らかに大きいものを前にすると、人は圧倒されるから。

ラスボス部屋の広さも、まったく同じ仕組みです。

「ここはいつもと違う」
「ここで終わる」

そんな空気を、
長い説明も、親切なナレーションもなしに、
床と天井の距離だけで分からせてくる。

ムービーがなくても、
セリフがなくても、
BGMが切り替わった瞬間に察する。

ああ、これは決戦だな、と。

広さは、
プレイヤーの感情をそっと押すための装置です。

スイッチを押したのは、
あなたではありません。

部屋に入った時点で、
もう押されています。

狭いラスボス部屋は間違いなのか?

ここまで読んだ人の中には、こう思った方もいるでしょう。

「じゃあ狭いラスボス部屋は全部ダメなの?」

……いいえ。
そんなことはありません。

むしろ条件がそろえば、狭さは最高のスパイスになります。

攻撃が分かりやすい。
画面が固定されている。
ギミック中心で、回避距離が短い。

こうした場合、狭い空間はちゃんと成立します。
というか、狭い方がいい。

逃げ場が少ない分、緊張感は増すし、
「次、何が来る?」と常に身構えることになる。

ただし、です。

「全力で動かしたい」
「全力で戦わせたい」

そんなラスボス戦になると話は別。
その瞬間、狭さはスリルではなく、
ただの窮屈さに変わります。

ホラーは狭くていい。
驚かせたいから。

決戦は広い方がいい。
戦わせたいから。

どちらが正しいかではありません。

用途が、まったく違うだけなのです。

最後に

広いのは、あなたを納得させるため

ここまで読んで、「なるほどな」と思った人もいれば、
「いや、それでも広すぎでは?」と首をかしげている人もいるかもしれません。

安心してください。
どちらも正常です。

ラスボスの部屋が広い理由は、突き詰めるとこのあたりに集約されます。

理不尽な負け方を減らすため
視界とカメラを守るため
派手な戦闘をきちんと成立させるため
そして、「ここが最後だ」と無言で伝えるため

要するに、

広いのは、あなたを叩き潰すためじゃない。
広いのは、あなたに「これは自分が勝ったんだ」と思わせるため。

次にラスボスの部屋へ足を踏み入れて、
「広っ……」と条件反射でつぶやいたら、
ぜひ一拍置いて、こう考えてみてください。

ここは、

負けても「まあ、分かる」と思えて
勝ったら「よくやった」と胸を張れる

そのためだけに用意された場所なのだと。

あの無駄に広い空間は、
あなたが最後まで操作し、考え、判断し、

主人公として物語を終えるために用意された舞台です。

そう思うと、
ちょっとだけ、あの広さも許せてきませんか。

……まあ、それでも広いんですけど。

ABOUT ME
佐藤直哉(Naoya sato-)
佐藤直哉(Naoya sato-)
ブロガー/小説家
文章を書くことを楽しむ自称・小説家です。
歴史や文化、日々の暮らしに潜む雑学を題材に、小噺や物語のタネになるエピソードを発信しています。
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