日常のふしぎ
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なぜ人は“水”に惹かれるのか?エビアンとコントレックスが日本で勝ち続ける理由

佐藤直哉(Naoya sato-)
<景品表示法に基づく表記>当サイトのコンテンツ内には商品プロモーションを含みます。

はじめに

コンビニで、いちばん静かな戦場はどこか?

レジ前?
スイーツ棚?
それとも新作チョコの特設台?

違います。

正解は水の棚です。

音はしない。
匂いもない。
色もない。
主張はゼロ。

炭酸のように無理やりテンションを上げてくるわけでもなく、コーヒーのように「さあ、今日も頑張ろうか」と背筋を正させてくるわけでもない。

ビールのように人生を一瞬だけごまかしてもくれない(※ここ重要)。

それでも、です。

海外ブランドの水——エビアンやコントレックス——は、日本で何十年も選ばれ続けています。

冷静に考えてください。

水です。
透明です。
味の違いも、説明されないとよく分からない。

それなのに棚の前で、私たちは一瞬立ち止まり、

「……今日は、こっちかな」

と悩む。

なぜなのか。

「水なんてどれも同じでしょ」と思った人ほど、ここから先を読んで見て下さい。

※本記事は筆者個人の感想をもとにエンターテインメント目的で制作されています。

日本は「水が強い国」なのに、なぜ水を買うのか

まず前提として、日本は世界的に見てもかなり珍しい国です。

蛇口をひねる。

そのまま飲める。

しかも、だいたいおいしい。

冷静に考えると、これ、すごい。

海外に行ったことがある人なら、ピンとくるはずです。

「水を買う=命を守る行為」だった国も、正直いくらでもある。

それに比べて日本では、水はすでに安全。

つまり——

日本で水を買う理由は、安全性ではないということ。

ここ、かなり重要です。

では何を買っているのか。

答えは拍子抜けするほどシンプル。

意味です。

体に良さそう。

ちゃんとしてそう。

今日は少し自分を労っている気がする。

実際に何かが劇的に変わるかはさておき、

「そう思える自分」になれる。

水は主張しません。

ラベルも静か。

成分表も控えめ。

でも、その一本はこう囁いてきます。

「大丈夫、今日はちゃんとやってる」

——水は、いちばん声の小さい自己肯定です。

「フランス産」と聞いた瞬間、人は弱くなる

高級ブランドの世界では、もはや常識のように語られる話があります。

「どこで作られたか」で、人は判断を変える。

いわゆる原産国効果です。

……と、言われると難しそうですが、やっていることはわりと単純。

フランス産と聞いた瞬間、頭の中で何かが始まる。

(♪それっぽいヨーロッパの音が、勝手に流れ出す)

そして人は、ほぼ反射的にこう思う。

「なんか、人生うまくいってそうな人が選んでそう」

冷静に見れば、中身は水です。

透明で、無言で、主張も少ない。

それなのに、ラベルに書かれた“フランス”の五文字だけで、

背景にテラス席や白いシャツや午後の光が立ち上がる。

……いや、こちらの想像力が豊かすぎるだけかもしれません。

でも、この“勝手に補完してしまう力”こそがポイント。

日本の消費者は、商品そのものだけでなく、

そこに貼られた記号や物語を読むのが、とても得意なのです。

エビアン:水を“生活の一部”に溶け込ませた

日本上陸は1987年。まずは特別な場所から

エビアンは1987年、日本で本格展開を始めました。

いきなりコンビニで勝負? しません。

最初はホテルやレストラン。

「ちょっといい場所」で目にする存在として登場します。

人は不思議なもので、

  • 特別な場所で見る
  • 家では飲めない

この状態が続くと、勝手に価値を感じ始めます。

そしてある日、普通に買えるようになると、こう思う。

「じゃあ、買おうか」

手に入らないものに弱く、手に入るようになると欲しくなる。

人間はだいたい、このループで動いています。

水なのに、デザイナーと組む

エビアンの戦略で象徴的なのが、デザイナーズボトルです。

2008年以降、著名デザイナーと組んで、毎年ボトルを刷新。

水に、服を着せた。

普通は逆です。

水は余計なものを削る方向に進む。

でもエビアンは、「見せる」方向に振り切った。

その結果、どうなったか。

飲む前に、少し眺める水が生まれた。

これ、かなり大きな発明です。

日本だけの220mlという細やかさ

さらに、日本限定の220mlボトル。

大きくない。重くない。余らない。

日本の生活は「ちょっと」の積み重ねです。

ちょっと歩く。
ちょっと飲む。
ちょっと我慢する。

そこに、このサイズ感を差し込む。

派手ではないですが、効きます。

ブランドは、こうして日常に入り込みます。

コントレックス:飲みにくさを隠さなかった

最初から「美容・ダイエット」の立ち位置

コントレックスは1990年に日本上陸。

エビアン「上質で上品」なら、こちらはかなり正直です。

「美容・ダイエット向けです」

水なのに、目的を背負っている。

これは強い。

喉が渇いたときの水は選ばれにくい。

でも、目的があると選ばれる。

硬度1468mg/L。正直、飲みにくい

コントレックスは超硬水です。

初めて飲むと、だいたいこうなります。

「……あ、味あるね」

軟水に慣れた日本人には、はっきりした違和感。

でも、コントレックスはここを隠さなかった。

むしろ、前に出した。

飲みにくい=効きそう

この発想です。

苦い薬ほど効くと思ってしまう、人間の心理をうまく使ったのです。

味ではなく、続ける理由を売った

コントレックスは「おいしい水」を目指していません。

「続ける意味のある水」を目指した。

飲むたびに、

「今日もちゃんとしてるな、自分」

と思える。

水というより、習慣です。

軟水文化が、輸入水を目立たせた

日本の水は、基本的に軟水です。

やさしい。
主張しない。
空気を読める。
和食向き。

言ってしまえば、とても良い水。

でも逆に言うと、クセがない

ここで海外の硬水が登場すると、どうなるか。

……目立ちます。

静かな会議室に、急に関西弁の人が入ってくる感じ。

悪目立ちではない。
でも、確実に存在感はある。

そこで役割が分かれます。

  • エビアン:硬水だけど比較的やさしい → 「硬水ってこんな感じか」の入口担当
  • コントレックス:超硬水 → 「今日は本気だぞ」という覚悟担当

同じ水でも、キャラ設定が違う。

そして人は、キャラが立っていると選びやすい。

どれも同じに見える棚の前で、

「今日はこの役割の水にしよう」

——そんな判断が、無意識に行われているのです。

水がファッションになった時代

80〜90年代、日本は消費社会のど真ん中にいました。

とにかく何でも「選ぶ時代」

必要だから買う、ではなく、

選んでいる自分が好きだから買う

そんな空気が、街全体に漂っていた。

もちろん、水もその流れから逃げられません。

いつの間にか、水はこう変わります。

持ち歩く水。

見せる水。

バッグから少しだけ覗かせる水。

それだけで、

「この人、生活が破綻してなさそう」

に見える。

……いや、見える“気がする”

完全に錯覚です。

でも、人はその錯覚に弱い。

そしてマーケティングは、

その弱さをとても丁寧に扱う技術なのです。

結局、海外ブランドは水を売っていなかった

ここまで読んで、「なるほどね」と思った人もいれば、

「いや、とはいえ水でしょ?」と思った人もいるはずです。

正解です。
水です。

ただし——水だけではなかった

エビアンもコントレックスも、

やっていたことを一言で言うなら、こうです。

水を“そのまま”売らなかった

代わりに、こんなものを一緒に差し出した。

  • フランス産という来歴(なんだか信頼できそう)
  • ボトルという見た目(持っていて納得できる)
  • 飲む理由という物語(今日はこれを選ぶ理由がある)

……冷静に見ると、

かなり人間くさい商売です。

人は、意味がないと選べない。

理由があると、納得して買える。

だから海外ブランドは、

水の横に「選ぶための理由」を並べた。

結果どうなったか。

水は残り、ブランドも残った。

——結局いちばん強かったのは、味ではなく、納得感でした。

最後に

今日、あなたはどんな水を選ぶか?

次に水を手に取るとき、ほんの一瞬だけ立ち止まってみてください。

喉が渇いたから?

……もちろん、それも正解。

でも、もしかするとこんな気分かもしれません。

  • 今日一日を、ちゃんと終えた気になりたい
  • 明日の自分に、ほんの少しだけ期待したい
  • 生活が破綻していない証拠を、一本持っておきたい

いや、最後のは言いすぎかもしれません。

でも、案外そんなものです。

水は何も語りません。

自己主張もしないし、説教もしない。

ただ黙って、そこにある。

それなのに私たちは、棚の前で一瞬考えてしまう。

「今日は、どの水にしようか」と。

たった一本の水に、

その日の気分や価値観、

そして“なりたい自分”が、

驚くほど静かに映っているのです。

ABOUT ME
佐藤直哉(Naoya sato-)
佐藤直哉(Naoya sato-)
ブロガー/小説家
文章を書くことを楽しむ自称・小説家です。
歴史や文化、日々の暮らしに潜む雑学を題材に、小噺や物語のタネになるエピソードを発信しています。
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