日常のふしぎ
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気づけば再生してる…なぜ“昔の曲”は僕らを離してくれないのか?

佐藤直哉(Naoya sato-)
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はじめに

通勤電車でふとイヤホンから流れてくるのは、最新チャートの曲
……ではなく、なぜか学生時代に鬼リピートしていたあの曲

「新曲を開拓するぞ!」と意気込んでサブスクを開くのに、気づいたら90年代プレイリストに帰ってきている
——そんな自分にツッコミを入れたこと、ありませんか?

実はこれ、あなただけの現象ではありません。

アメリカの調査によると、リリースから18か月以上たった“昔の曲(カタログ音源)”が、なんと音楽消費全体の約7割を占めていると言われています。
つまり世界は今、「新曲の時代」というよりも「昔の曲が無双している時代」なんですね。

では、なぜ私たちはこんなにも昔の音楽に吸い寄せられてしまうのでしょうか?

スマホ片手に、頭の中で自分の“青春プレイリスト”を再生しながら読んでみてください。

※本記事は筆者個人の感想をもとにエンターテインメント目的で制作されています。

データが教えてくれる「旧曲つよつよ時代」

まずは数字からサクッと現実を直視してみましょう。

・アメリカでは、リリースから18か月以上たった「カタログ音源」が、アルバム相当消費の約72〜73%を占める
・2023年、世界の音楽ストリーミング総数は4兆回を突破
・2024年には4.8兆ストリームに達し、世界の音楽売上の約7割がストリーミング由来

……と、数字だけ並べるとちょっと遠い世界の話に聞こえますが、要するにこういうことです。

スマホの中で再生されている曲の大半は「新作」ではなく「昔の曲」。

しかも「昔の曲」の伸び率は、新曲よりも速いというデータまで出ています。
地味にコツコツ聴かれていたはずが、気づけば主役。
クラスの隅っこにいたはずの子が、卒業したあとインフルエンサーになっていた、みたいな状況ですね。

ここまでくると、「昔の曲を聴いてしまう自分」を責める必要はまったくありません。

むしろ世界のトレンドど真ん中です。
ドヤ顔してOKです。

ストリーミングが「過去」と「今」の壁を壊した

昔は、昔の曲を聴こうと思ったら、押し入れの奥からCDを発掘したり、レンタルショップに走ったりと、それなりに“覚悟”が必要でした。

ところが今はどうでしょう。

SpotifyやApple Musicを開けば、80年代の名曲も、昨日出たばかりの新曲も、同じ画面にサラッと並んでいます。
物理的なハードルはゼロどころか、むしろ「おすすめ」に勝手に出てくる始末。

ストリーミングの世界では、曲のリリース年はほぼ空気です。

「あなたにおすすめ」
「〇〇年代ヒッツ」
「夜のドライブに」

こんなプレイリストに古今東西の曲がミックスされ、AIのレコメンドが「そうそう、こういうの好きなんでしょ?」と、心を読んだように差し出してくる。

CDを探しに行くほどではなかったけれど、なんとなく気になったから聴いてみる
——そのワンタップが積み重なって、旧曲の再生数が爆増しているわけです。

便利すぎて怖い。
でもやめられない。
これがストリーミングの魔力です。

TikTokとドラマが古い曲を「最新」に変える

「え、この曲ってお母さん世代のやつなの?」

Z世代の若者が昭和歌謡を口ずさみ、親世代がびっくりする
——そんな光景があちこちで起きています。
その裏側にいる黒幕(?)が、TikTokやNetflixなどの動画プラットフォーム。

TikTokでは、曲のリリース年なんてだれも気にしていません。
大事なのは
「この振り付けにハマるか」
「このネタに合うか」

その結果、

1980年代の曲がダンスチャレンジで大流行
2000年代のJ-POPが“最新のバズ曲”として再評価

という、時間感覚がバグる現象が起きています。

実際、イギリスのデータでは、TikTokで人気のトップ曲のうち、かなりの割合が「5年以上前の曲」だと報告されています。
令和生まれが平成ソングで踊り、平成生まれが昭和歌謡でバズる。
一体ここは何年代なんでしょうか。

ドラマや映画も同じです。

『ストレンジャー・シングス』で使われた80年代の曲が世界チャートに再浮上したり、日本でも昔のヒット曲がドラマ主題歌として再利用されて再ブレイクしたり。

物語の中で曲が新しい意味を与えられた瞬間、古い曲は「過去の遺物」から「今この瞬間のテーマソング」にアップデートされます。

脳は「青春時代のBGM」を一生手放さない

ここから少し、脳と心の話です。

人間には「レミニッセンス・バンプ」と呼ばれる現象があります。
ざっくり言うと、10代後半〜20代前半の記憶が、異様に鮮明に残りやすい、というもの。

初めての恋
部活でボロボロになった夏
深夜まで語り合った友だち

こうした出来事の背景には、必ずと言っていいほど音楽が流れています。
つまり、青春時代の音楽は、あなたの人生の“BGM”というより“記憶そのもの”に近い。

だから大人になってその曲を聴くと、

「曲を聴く → 記憶がよみがえる → 当時の感情もまとめてカムバック」

という連鎖が起こります。

脳内にはドーパミンが分泌され、ちょっとした幸福感や安心感が生まれる。
科学的に見ても、昔の曲に戻りたくなるのはかなり合理的な行動なんですね。

さらに研究によると、昔好きだった曲を聴くことには、

ストレスの軽減
孤独感の緩和
「自分は自分でいい」という感覚の回復

といったメンタル面でのメリットもあると言われています。
もはや「昔の曲プレイリスト」は、ちょっとしたセルフケアツールです。

落ち込んだときに青春ソングを再生してしまうのは、単なる現実逃避ではなく、かなり高度な自己防衛かもしれません。

「昔の曲のほうが良かった」と感じる理由

ここで一度、厳しい現実もお伝えしておきます。

「最近の曲、全部同じに聞こえるんだよね」

そう嘆いてしまうとき、私たちはある“認知バイアス”にハマっています。

それが「生存者バイアス」

昔の音楽で、今も語り継がれているのは、膨大な曲の中から勝ち残った“ごく一部の名曲”です。
普通レベルの曲、微妙だった曲、時代の波に飲まれて消えた曲たちは、ほぼ記憶から消えています。

一方、今まさにリリースされている曲たちは、名曲も凡作も迷作もひっくるめた“フルラインナップ状態”

つまり私たちは、

「昔の“ベスト盤”」対「今の“全部入りセット”」

という、だいぶ不公平な比較をしているわけです。

そりゃあ昔の曲のほうが良く聞こえて当たり前。

もちろん、制作環境やトレンドの変化で、今と昔の音楽の質感が違うのも事実です。
ただ、「昔のほうが絶対良かった」と決めつけてしまうと、新しいお気に入りと出会うチャンスを自分で捨てていることにもなります。

たまには意識的に「最近のおすすめ」プレイリストを流しつつ、「これは10年後の自分にとっての“懐メロ予備軍”かもしれない」と思いながら聴くのも、なかなかオツなものです。

ビジネス的にも「昔の曲」はおいしすぎる

ここまで読んで、「いやいや、とはいえ音楽業界は新譜を売りたいはずでしょ?」と思うかもしれません。

ところがどっこい、業界側もいまや“カタログ音源”にかなり本気です。

旧譜がストリーミング再生の大半を占める
安定的なロイヤリティ収入を生む「資産」として投資対象になっている

という事情から、

リマスター版
記念デラックス盤
アナログ再発
ノスタルジー系フェス

など、「昔の曲をもう一度世に出す」ための施策が世界中で量産されています。

新曲をゼロから当てるのはギャンブル。
でも、すでに一度ヒットした曲を、TikTokやドラマと組み合わせて再ブレイクさせるほうが、投資としては確実——というわけです。

要するに、リスナーの「昔の曲好き」と、ビジネス側の「カタログおいしい」が、きれいに利害一致している。
だからこそ、昔の音楽はこれからも何度でもよみがえってくるはずです。

世代をまたぐ「共有BGM」になりつつある

おもしろいのは、「昔の曲」が単なる懐メロで終わらず、世代を超えた共通言語になりつつあることです。

イギリスの報道では、Z世代カップルの結婚式で、親世代とほぼ同じ70〜90年代の曲が選ばれている、という話もあります。
親子で同じ曲に盛り上がる結婚式。強い。

日本でも、親が青春時代に聴いていたシティポップを、子どもがTikTok経由で知り、むしろ子どものほうが詳しい、という逆転現象が起きています。

「え、その曲知ってるの?」
「逆に知らないの?」

音楽がきっかけで世代間の会話が生まれ、価値観のギャップが少しだけ埋まっていく。
昔の曲は、いつの間にか“家族の共通BGM”になっているのかもしれません。

最後に

昔の音楽は、「過去」ではなく「今を支えるインフラ」かもしれない

ここまで、

データ上、旧曲が圧倒的に聴かれていること
ストリーミングやTikTokが時間の壁を溶かしていること
青春時代の音楽が、脳と心に深く刻まれていること
ビジネス的にもカタログが重要視されていること
そして、それが世代をつなぐ役割も担いつつあること

を見てきました。

改めて考えると、「昔の音楽」って、もはや過去の文化遺産ではないんですよね。

疲れたときにそっと再生すれば、当時の自分が「大丈夫だよ」と肩を叩いてくれる。
親世代と同じ曲で盛り上がれば、ちょっと気恥ずかしいけど、悪くない。
そんなふうに、私たちの日常や人間関係を静かに支えてくれる、“目に見えないインフラ”のようなものになっている気がします。

この記事を読み終わったら、よかったら一曲だけ、「昔いちばん好きだった曲」をかけてみてください。

きっと、イントロが鳴った瞬間、忘れていた何かがふっと胸の奥で動き出します。

それこそが、昔の音楽が今でも聴かれ続ける、一番シンプルで、そして一番ロマンチックな理由なのかもしれません。

ABOUT ME
佐藤直哉(Naoya sato-)
佐藤直哉(Naoya sato-)
ブロガー/小説家
文章を書くことを楽しむ自称・小説家です。
歴史や文化、日々の暮らしに潜む雑学を題材に、小噺や物語のタネになるエピソードを発信しています。
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