未発見ファイル
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人体自然発火の謎――人間だけが燃えて、部屋は残った⁉

佐藤直哉(Naoya sato-)
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はじめに

人間は灰になった。部屋は残った。

1951年7月2日。

アメリカ・フロリダ州の、とあるアパート。

67歳のメアリー・リーサーが、自宅で亡くなっているのが発見されました。

椅子があった場所には、焼け焦げた金属製のスプリング。

床には灰が散らばっています。

そして、そこに残されていたのは……。

靴を履いた足の一部。

女性の身体の大部分は、焼失していました。

ところが、部屋を見渡すと……。

ベッドは残っています。

ほかにも、ほとんど燃えていない家具がありました。

壁には煤が付き、熱で傷んだものもありますが、部屋全体が焼け落ちたわけではありません。

「……どうして、身体だけがこんなに燃えた?」

この事件にはFBIも調査に関わりました。

しかし、発火の瞬間を目撃した人はいません。

このような奇妙な事件は、昔からある名前で呼ばれていました。

「人体自然発火現象」

人間が外部の火種なしに、突然燃え始めるという説です。

身体はほとんど燃え尽きたのに、部屋は残っていた。

この不可解な光景は、実は200年以上前にも記録されていました。

※本記事は筆者個人の感想をもとに制作されているため、正確ではない情報の可能性があります。また、本文中の人物名については、文章を読みやすくするため敬称を省略しています。

300年前にも、奇妙な事件があった

1731年、イタリア。

伯爵夫人コルネリア・ザンガリ・バンディが、自宅で焼損した状態で発見されました。

当時の記録によると、身体の大部分は灰になっていました。

ところが、膝から下の脚は残っていたのです。

しかも……。

靴下まで残っていた。

部屋には油っぽい煤が付いていたものの、ベッドなどは大きく焼けていなかったといいます。

身体だけが激しく焼ける。

そんな奇妙な光景は、300年近く前にも報告されていたのです。

現場に残された、小さなランプ

この事件の記録には、気になるものが登場します。

遺体の近くにあったという、小さなオイルランプです。

ランプが火元だったかは分かりません。

また、当時は現代のような火災調査も行われていませんでした。

それでも、少なくとも火種になり得るものは存在していたのです。

外から火がついたとしても、身体はここまで激しく燃えるのでしょうか?

人間の身体は、そんなに燃えるのか?

濡れたタオルを想像してください。

乾いた布と違い、水分を多く含んだタオルは簡単には燃えません。

人間の身体も、水分を多く含んでいます。

それなのに、骨まで激しく焼けてしまう事件がある。

火葬場では高温の炉を使うのに、住宅の中でそこまで燃えるのでしょうか?

科学者たちが注目したのは、身体に含まれる体脂肪でした。

人間の身体は、ロウソクになる?

誕生日ケーキのロウソク。

小さな炎が、ずっと燃え続けています。

実は、溶けたロウが芯に吸い上げられ、燃料になっているからです。

これを人間に置き換えると……。

ロウの代わりが体脂肪。

芯の代わりが衣服や寝具。

身体が十分に加熱され、溶けた脂肪が焦げた布に吸収されると、燃焼が続く場合があります。

これが「芯効果」です。

ただし、十分な加熱など、条件がそろう必要があります。

科学者は、本当に燃やしてみた

1999年。

研究者たちは豚の組織を使い、脂肪が燃え続ける条件を調べました。

その結果、十分な加熱と、脂肪を吸い上げる芯があれば、燃焼が続くことを確認しました。

さらに2001年。

体重約95キログラムの豚を毛布で包み、カーペットの上に置きました。

そして、ガソリンを使って毛布に着火します。

ガソリンは約4分で燃え尽きました。

しかし……。

火は消えませんでした。

小さな炎が、6時間半

ガソリンがなくなっても、焦げた布が芯となり、豚の脂肪が燃料として供給され続けました。

炎の高さは、おおむね35センチ以下。

30センチ定規より少し大きい程度です。

それなのに……。

6時間半以上も燃え続けたのです。

消火した時点で、豚の身体は重量の60%以上を失っていました。

炎は小さくても、長時間燃え続ければ、身体はここまで焼けてしまうのです。

今度は、人間の遺体で確かめた

2012年。

研究者は、防腐処理されていない2体の人間の遺体を使った実験を発表しました。

寝具に外部から火をつけ、燃え方を観察します。

すると……。

約6〜7時間、燃焼が続きました。

特に激しく焼けたのは胴体。

一方、頭や手足は比較的残りました。

脂肪の量や周囲の燃焼条件が異なるため、全身が均等に燃えるわけではなかったのです。

かつて人体自然発火の特徴とされた焼け方が、外部から火をつけた実験でも起こりました。

激しい火災より、小さな炎が身体を焼いた?

研究者は、別の部分遺体を使い、部屋全体に火が広がる状況も再現しました。

こちらは激しい火災です。

しかし、約15分間の火災で生じた胴体の損傷は、主として表面にとどまりました。

一方、小さな火が長時間続いた実験では、胴体が深く焼損しました。

「大きな炎の方が、よく燃えそうなのに?」

違いを生んだのは、熱を受け続けた時間でした。

たとえば料理でも、強火で短時間焼く場合と、弱火でじっくり加熱する場合では、中まで熱が伝わる程度が違います。

人体の場合は、さらに脂肪が燃料として供給され続けることが関係しています。

あの部屋が残った理由

1951年のメアリー・リーサー事件。

身体の大部分が焼失し、椅子も焼け落ちていました。

それなのに、ベッドなどの家具は残っていました。

科学者たちの実験は、この不思議な光景を説明する手がかりを示しています。

身体の脂肪を燃料に、比較的小さな火が長時間燃え続けた可能性があるのです。

もちろん、リーサー事件で実際にそうだったと確定したわけではありません。

しかし、奇妙な焼け方そのものは、自然発火しなくても起こり得ると分かりました。

それでも「自然発火」と判断された

2010年、アイルランド。

76歳のマイケル・フェアティが、自宅の居間で焼死体となって発見されました。

身体は激しく焼けていましたが、火災の被害は主に居間だけでした。

現場には暖炉がありました。

しかし、調査では暖炉が火元だったと認定できませんでした。

そして2011年。

死因審問で検死官が示した判断は……。

「人体自然発火」

科学的な燃焼研究が進んだ時代にも、この名前が使われたのです。

「自然発火」という名前の落とし穴

身体が激しく燃えた。

しかし、何が最初の火種だったのかは分からない。

そんな事件は、確かに不思議です。

ただし、火災では証拠そのものが燃えて失われることもあります。

火元が分からないことは、火元が存在しなかった証拠ではありません。

科学者たちが明らかにしたのは、身体が燃え続ける仕組みです。

奇妙な焼け跡だけを見て、自然発火だと決めつける必要はないのです。

最後に

便利すぎる死因

ある日、一人の男性が自宅で焼死体となって発見されました。

身体は激しく焼けている。

でも、部屋はほとんど燃えていない。

捜査官が調べても、原因は分かりません。

そこで、報告書に一言。

「人体自然発火」

……便利な言葉です。

誰が火をつけた?

なぜ逃げられなかった?

火災の前に何があった?

「人体自然発火です」

これなら、分からないことを全部まとめてしまえます。

しかし、タバコの火が原因だったかもしれません。

病気で倒れたあと、火が燃え移ったのかもしれません。

原因が分からないことと、超常現象が原因だったことは別です。

奇妙な焼け跡だけで、自然発火と決めつける必要はありません。

原因を突き止められなくても、何が起こったのかを調べることには意味があります。

亡くなった人にとっても、その方がいいのではないでしょうか?

自分の死を、超常現象として片付けられずに済むのですから。

ABOUT ME
佐藤直哉(Naoya sato-)
佐藤直哉(Naoya sato-)
ブロガー/小説家
文章を書くことを楽しむ自称・小説家です。
歴史や文化、日々の暮らしに潜む雑学を題材に、無駄雑学などの小噺を発信しています。
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