日常のふしぎ
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なぜコンビニのおにぎりは三角なのか?——僕たちは“あの形”に何を託してきたのか

佐藤直哉(Naoya sato-)
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はじめに

コンビニの棚にずらりと並ぶ、三角のおにぎり。

夜の帰り道、ネクタイをゆるめたサラリーマンも、ベビーカーを押すママも、部活帰りの高校生も、なぜかみんな迷わずその三角を手に取ります。

白いパッケージの中で、海苔をまとった小さな三角形。

考えてみれば不思議です。

なぜ「丸」でも「四角」でもなく、あの“とんがり帽子”みたいな形なのか。

そもそも、おにぎりはただのごはんの塊です。

パンは四角でも丸でも許されるのに、なぜおにぎりだけは三角でなければならないのか?
むしろ丸いほうがかわいいし、四角ならお弁当箱にもきれいに収まるはず。

それなのに僕たちは、無意識のうちに「おにぎり=三角」と思い込んでいる。
でも実はこの常識、つい最近できたものなのです。

※本記事は筆者個人の感想をもとにエンターテインメント目的で制作されています。

三角は神様の住処だった

三角形は、ただのデザインではありませんでした。

はるか昔、日本人は山に神様が宿ると信じていました。
太陽を運び、雨を呼び、作物を育ててくれる存在。
つまり山は、巨大なパワースポットだったわけです。

そこで人々は、ごはんを山の形に見立てて握りました。
三角にして、頂点をつくる。
そのてっぺんに神様が降りてくると信じられていたのです。

今でいうなら、「エネルギーチャージ用のごはん」
おにぎりは、ただの携帯食ではなく、ちょっとしたお守りだったのかもしれません。

ちなみに「おむすび」という言葉の語源には「神様と結ぶ」という意味もあるそうです。

おにぎり一個で、神様とコネクション。
なかなかコスパのいい信仰です。

実は三角だけじゃなかったおにぎり界

ここで意外な事実をひとつ。
昔から日本中のおにぎりが三角だったわけではありません。

むしろ、形はかなり自由でした。

・俵みたいな「俵型」
・お月さまみたいな「丸型」
・せんべいみたいな「円盤型」

まるで戦国時代の群雄割拠。
地域によって“推しおにぎり”が違ったのです。

関東は三角派、関西は俵派、東北は円盤派、九州は丸派。
今で言えば、きのこ派とたけのこ派どころじゃない分断です。

つまり「おにぎり=三角」は、伝統というより“勝ち残った形”だったのです。

1978年、コンビニが世界を変えた

転機は1978年。
『セブン-イレブン』が革命を起こします。

それまでのおにぎりは、作るもの。
それを「買うもの」に変えたのが、コンビニでした。

しかもただ売るだけじゃありません。
海苔がパリッとしたまま食べられる包装技術を開発。
食べる直前に海苔とごはんが合体する、あの仕組みです。

今では当たり前ですが、当時は衝撃でした。

「え、家で握らなくてもいいの?」

「しかもパリパリ?」

こうしておにぎりは、家庭料理から工業製品へと進化していきます。
そして、ここで重要なのが“形”でした。

三角は“売れる形”だった

コンビニにとって大事なのは、神様よりも売上です。

ご利益よりも、回転率。
縁起よりも、物流効率。

そこで選ばれたのが三角形でした。

なぜか。

理由はとても現実的です。

・機械で成形しやすい
・型にハマりやすい
・崩れにくい
・持ちやすい
・見た目が大きく見える
・ラベルが貼りやすい
・棚に並べやすい

もう、優等生すぎる。
いわば「定番中の定番」

しかも三角形は、力が分散されやすいので、握っても型崩れしにくい。
つまり人間にも機械にも優しい形。

この「ちょうどよさ」が、コンビニの大量生産と相性抜群だったのです。

深夜のレジ前で、三角をかじる

想像してください。

終電間際のコンビニ。
レジ横のホットスナックから漂う、油と醤油の匂い。
冷蔵ケースのガラスに映る、少し疲れた自分の顔。

無意識に手に取ったのは、やっぱり三角のおにぎり。
ビニールを引っ張ると、パリッと音を立てて海苔がほどける。
指先に伝わる、まだほんのり温かいごはん。

一口かじると、ふわっと広がる米の甘みと、海苔の香ばしさ。
ああ、日本に生まれてよかったなと思う、あの瞬間。

その小さな幸せの形が、たまたま三角だっただけなのかもしれません。

こうして三角は“常識”になった

コンビニが全国に広がると同時に、三角おにぎりも日本中へ進出しました。

気づけばスーパーも駅もサービスエリアも、三角だらけ。
視界に入るのはとんがり、とんがり、とんがり。
山みたいな三角ばかりです。

そして、他の形は「変わり種」扱いです。
丸いおにぎりを見ると、なんだか手作り感が強すぎて逆に戸惑う。
俵型を見ると、「老舗旅館の朝食かな?」と勝手に想像してしまう。

こうして私たちの脳内では、

おにぎり = 三角

という数式が完成しました。

誰に教わったわけでもないのに、いつの間にか刷り込まれている。
思い込みって、だいたい無自覚で始まるから厄介です。

最後に

それでも三角は、ちょっとロマンチックだ

コンビニが生んだ合理の結晶。
大量生産と物流に最適化された、無駄のないフォルム。

それが三角おにぎりの正体です。
……と、ここまで読むと、ずいぶんドライな話に聞こえるかもしれません。

でもルーツをたどると、そこには山があり、神様がいて、人の祈りがありました。

効率と信仰。

工場と田んぼ。

レジと神社。

この組み合わせ、どう考えても同じ画面に映らないはずなのに、三角おにぎりの中ではちゃんと共存しています。器用だ。

明日もきっと、あなたはコンビニで三角を選びます。
理由なんて考えずに、当たり前のように。
でもその小さな頂点には、ほんの少しだけ、昔の人の願いが残っている。

そう思うと、レジ袋の中のおにぎりが、ほんのり誇らしげに見えてきませんか。
三角は、今日も静かに私たちの空腹を守っています。

ABOUT ME
佐藤直哉(Naoya sato-)
佐藤直哉(Naoya sato-)
ブロガー/小説家
文章を書くことを楽しむ自称・小説家です。
歴史や文化、日々の暮らしに潜む雑学を題材に、小噺を発信しています。
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