冬に太り、夏にやせるのはあなたのせいじゃない。――食欲は、季節に操られている
はじめに

真夏の昼下がり、アスファルトの上で目玉焼きが焼けそうな気温のなか、あなたはコンビニの冷蔵ケースをぼんやり眺めています。
冷やし中華。
冷麺。
ざるそば。
アイスコーヒー。
「うーん……食べたいような、そうでもないような……」
一方で、木枯らしが吹き始めた頃になるとどうでしょう。
仕事帰り、駅前のラーメン屋の湯気に吸い寄せられ、ついでにたい焼きまで買ってしまい、家に着いたら鍋をつつきながらビールを開けてしまう。
――いや、別にそんなにお腹すいてなかったはずなんだけど?

この落差、いったい何なんでしょう。
意志が弱い?
自制心がない?
根性が足りない?
いいえ。断言します。
それ、あなたのせいじゃありません。
食欲は、季節に操られているだけなんです。
※本記事は筆者個人の感想をもとにエンターテインメント目的で制作されています。
食欲は「気温」によって裏切る

人間の体は、とてもよくできた暖房器具です。
食べると体がポカポカしてきませんか?
あれは消化の過程で熱が生まれているからです。
つまり、食事は「エネルギー補給」であると同時に「暖房スイッチ」でもあるわけです。
となると、話は簡単。
真夏の35度で、さらに体を温めたい人なんていません。
エアコンの効いた部屋でも、体はちゃんと外気温を感じています。
「これ以上、熱はいりません」
体はそう判断して、自然と食欲にブレーキをかける。
だから夏は、そうめん一束で満足したり、アイスだけで夕飯を済ませたりするのです(そして深夜にお腹が鳴る)。

逆に冬はどうでしょう。
冷たい風にさらされ、指先がかじかみ、肩をすくめながら歩く帰り道。
体は思っています。
「……寒い。もっと燃料くれ」
この瞬間、あなたの胃袋はストーブに変身します。
冬の食欲は「温もりへの渇望」

冬にラーメン、鍋、シチュー、グラタン、肉まん。
なぜ、こんなにも温かいものが恋しくなるのか。
答えは単純で、体が「温まりたい」と叫んでいるからです。
食べると体が温まる。
温まると、ちょっと安心する。
安心すると、もっと食べたくなる。
……この無限ループ、危険すぎませんか?
しかも冬は、体温を保つためにエネルギーを余分に使います。

つまり、体はこう勘違いするのです。
「寒い=非常事態=もっと食べないと死ぬ」
いや、暖房ついてるし。
ヒートテック着てるし。
スーパーは年中無休だし。
現代日本に冬眠は不要です。
でも、体はまだ原始時代のままなのです。
太陽がサボると、食欲が暴走する

ここで登場するのが、太陽です。
実は、人間の食欲は「光」によっても調整されています。
朝の光を浴びると、体内時計がリセットされ、気分を安定させるホルモンが分泌されます。
ところが冬。
日の出は遅く、日の入りは早い。
会社に行くときも帰るときも真っ暗。
「今日、太陽見てないな……」という日が続きます。
すると体内時計はズレ始め、睡眠の質が下がり、気分も沈みがちになります。
このとき脳は考えます。
「元気が足りない。何かで補給しよう」

そして白羽の矢が立つのが――
そう、甘いものと炭水化物。
ケーキ、ドーナツ、チョコ、ラーメン、パスタ、ピザ。
脳にとっては即効性のあるエネルギー源です。
つまり冬の暴食は、心の防寒着なのです。
胃袋、現場に急行せよ(五感総動員)

雪がちらつく夜。
吐く息が白く、耳の先がじんと冷える。
コンビニの自動ドアが開いた瞬間、ふわっと広がるおでんのだしの匂い。
湯気が立ち上るレジ横ケース。
大根は透き通り、卵は黄金色に輝き、ちくわは湯船につかっているような顔をしている。
「……1個だけ」
そう言いながら、気づけば三点盛り。
手に持った紙カップから伝わるじんわりした熱が、手のひらに染みてくる。
この瞬間、あなたの体と心は完全に和解しています。
冬の「炭水化物祭り」は心のSOSかもしれない

冬になると、やたら眠い。
やたら甘いものが食べたい。
気分もどんよりしがち。
そんな人は、ただの「冬あるある」で片付けない方がいいかもしれません。
日照時間が減ることで気分のバランスが崩れ、食欲が暴走することがあります。
これを専門的には「冬季うつ」と呼ぶこともあります。

とはいえ、いきなり病院に行けと言いたいわけではありません。
ただ、「冬は食べちゃう自分」を責める必要はない、ということだけ覚えておいてほしいのです。
あなたは怠けているのではなく、季節と戦っているだけなのですから。
食欲は「イベント」ともグルです

忘れてはいけないのが、人間の食欲はカレンダーにも弱いという事実。
秋は収穫祭。
冬はクリスマス、忘年会、正月、新年会。
鍋パ、焼肉、すき焼き、しゃぶしゃぶ。
もう、逃げ場がありません。
さらに寒いと外に出なくなる。

運動量は減る。
家でゴロゴロしながら、みかんを箱で買う。
……太る要素、揃いすぎです。
でもそれは「人生を楽しんでいる証拠」でもあります。
たまにはカロリーも思い出を蓄えたっていいじゃないですか。
季節とケンカしない食べ方

とはいえ、体重計と戦争になるのは避けたい。
そこで、ちょっとした知恵。
夏は、量より質。
食べられない日は、冷ややっこ、納豆、ヨーグルト、果物など、少量でも栄養のあるものを。

冬は、まず温かい汁物。
味噌汁、スープ、鍋。
先に胃を温めると、暴走しにくくなります。
そして朝は、できるだけ光を浴びる。
カーテンを開けて、コーヒーを飲みながらベランダに出る。
それだけで体内時計は少し整います。
完璧じゃなくていいんです。
季節と折り合いをつけるだけでいい。
最後に

食欲は、あなたの敵じゃない
食欲は、生きるための本能です。
季節に合わせて増えたり減ったりするのは、何万年も前から続いてきた人類の仕様です。
私たちは文明を手に入れましたが、体はまだ焚き火のそばにいるつもりでいます。
だから冬は燃料を求め、夏は火を遠ざける。
それだけの話です。

もし今、あなたの手に温かいコーヒーがあり、窓の外に冷たい風が吹いているなら。
その一杯をゆっくり飲みながら、こう思ってみてください。
「今、体はちゃんと季節を感じているな」と。
食欲は、体から届く季節の手紙。
封を切るかどうかは、あなた次第なのです。

