日常のふしぎ
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なぜ日本人は「水まで買う」ようになったのか?——ペットボトル時代の裏側をのぞいてみた

佐藤直哉(Naoya sato-)
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はじめに

ある夏の日、コンビニの冷蔵ケースの前。
「炭酸水…フレーバー付き…硬水…軟水…アルプス…富士山…どれが“普通の水”なんだっけ?」

気づけば、たかが水を1本選ぶのに30秒以上悩んでいる自分がいます。
その横で、学生っぽい男の子がサクッと「天然水2本」をカゴにイン。

ふと頭をよぎるのは、祖父の言葉。

「水なんて、水道ひねればタダみたいなもんだろ」

そう、ほんの数十年前まで、日本には「水を買う」という発想すらほとんどなかったはずです。
なのに今、私たちは当たり前のように、1本100円〜150円の水を、毎日のように買っている。

いつから日本人は、水にお金を払うようになったのでしょうか?
そして、その裏にはどんなライフスタイルの変化があったのか?

今回は、ミネラルウォーターの歴史と、日本人の「水との付き合い方」の変化を、
ちょっと追いかけてみます。

※本記事は筆者個人の感想をもとにエンターテインメント目的で制作されています。

水を買う習慣はいつから始まったのか?

まずは、ざっくり年表。

  • 1880年代(明治)
    横浜・神戸の外国人居留地で、外国人向けに鉱泉水や炭酸水が販売され始めます。
    いわば「日本版・おしゃれスパークリングウォーター」の黎明期。
    ただし、主な顧客は外国人。
  • 1929年:富士ミネラルウォーター登場
    日本初の国産ミネラルウォーターが「日本エビアン」という名前でホテル向けに販売開始。
    しかし当時の日本人の反応はというと──
    「水が売れるわけがない」
    ……はい、フラグ立ちましたね。
  • 1970年代:バーの裏方として普及
    ウイスキーの水割りブームで、バーやクラブ向けにミネラルウォーターが使われるようになります。
    まだまだ一般家庭ではなく、「夜の街のアイテム」というポジション。
  • 1983年:『六甲のおいしい水』発売
    ここが大きなターニングポイント。
    ハウス食品が家庭向けミネラルウォーター市場に本格参入し、「家で水を買って飲む」という概念が広まっていきます。
  • 1990年代:不安と猛暑と災害のトリプルコンボ
    マンションの貯水タンク問題、水質汚染への不安、記録的猛暑、阪神淡路大震災…。
    「安全でストックできる水」として、ペットボトル水の需要が一気に高まります。
  • 1996年:500mlペットボトル解禁
    それまでは環境負荷を懸念して1L未満のペットボトルは自粛されていましたが、
    500mlがOKになった瞬間、
    「水は蛇口から」→「水はコンビニで」
    というスイッチがカチッと入ります。
  • 2000年代〜:健康・猛暑・防災でさらに加速
    健康志向、避糖(砂糖控えようムーブ)、地球温暖化による猛暑日増加、防災備蓄ニーズ……。
    結果、1人あたりのミネラルウォーター消費量は、この30年で何十倍にも。

ざっくりまとめると、

  • 売られ始めたのは 明治〜昭和
  • 一般家庭が飲み始めたのは 1980〜90年代
  • 誰もが持ち歩くようになったのは 1996年以降

という流れです。

水を買うのがありえなかった時代

では、そもそもなぜ日本人は「水はタダでしょ」と思っていたのか。

水資源にとことん恵まれていたから

日本は雨が多く、山も多い“水多すぎ国家”
川はじゃんじゃん流れてくるし、地下水も豊富。

さらに、戦後の高度経済成長期に一気に水道インフラが整備され、
「蛇口をひねれば安全な水が出る国」 になりました。

世界で「水道水がそのまま飲める国」はごく一部ですが、
日本はそのレア種のひとつ。
そりゃあ「水を買う」という発想、出てこないですよね。

「お茶を沸かせばよくない?」という文化

昭和までの家庭を思い浮かべると、

  • やかんでお湯を沸かし、
  • 急須にお茶っ葉を入れて、
  • ゆっくりお茶を入れる

という流れが日常の風景でした。
喉が乾いたら、お茶か麦茶。
夏は氷を入れて。

「喉が渇いた → 水をそのまま飲む」ではなく、
「喉が渇いた → お茶を飲む」 がデフォルトだったわけです。

そこに突然
「水どうですか? 1本100円です」
と言われても、

「え? お茶より高いの? 水なのに?」

となるのも、まあ当然。

飲料の主役はジュース&サイダー

清涼飲料史を振り返ると、戦後〜70年代にかけて、

  • サイダー
  • コーラ
  • オレンジジュース

などが「ちょっとした贅沢」として人気を集めていました。

お金を払って飲むなら、
「味がついているもの」
「テンションが上がるもの」
を選ぶのが人情というもの。

無味透明の水にお金を払うのは、
今で言うと「無地のTシャツと同じ値段で、ロゴ入りTシャツ売ってます」と言われて、
あえて無地を選ぶようなもの。
……今はあえて無地を選ぶ時代なんですが、それはまた別の話。

都市化・不安・健康志向が「水を買う」スイッチ

そんな「水はタダ」の国が、どうやって「水を買う国」になったのか。
鍵になったのは、都市化・不安・健康志向 三つ巴です。

マンションの貯水タンク問題:「この水、本当にきれい?」

1990年代、テレビや新聞で、

  • 清掃されていない貯水タンク
  • サビやゴミが溜まった水槽

の映像がたびたび話題になりました。

それまで「水道水=安全」と思っていた人たちの頭に、
じわじわと疑問が浮かび上がります。

「この水、どこを通ってきたんだろう…?」

見えないところを想像すると不安になる。
これ、完全に人間の心理あるあるです。

そこへ登場するのが、
「○○山の天然水」
「アルプスの恵み」
と大自然を背負ったミネラルウォーターたち。

  • 水源地がはっきりしている
  • ボトルやラベルに“清流”や“雪山”の写真
  • 「ここから汲みました」とストーリー付き

不安なとき、人は「見える安心」を買いたくなります。
その象徴が、透明なボトルに入ったミネラルウォーターだったわけです。

健康ブームと「避糖」トレンド

90年代〜2000年代にかけて、健康志向が猛烈に加速します。

  • カロリーオフ、ゼロ飲料の登場
  • 生活習慣病への関心アップ
  • 「砂糖を摂りすぎたくない」という意識

その結果、
「ジュースより水の方がなんとなくヘルシーっぽい」
という、ふんわりした価値観が広がっていきます。

しかもミネラルウォーターには、

  • カルシウム
  • マグネシウム
  • 硬度
  • pH

など、なんとなく健康に良さそうなワードがたくさん。
正直、全部理解している人は少数派でしょうが(笑)、
「ラベルに難しそうな成分が書いてある=体によさそう」という、
おなじみの人間心理が働きます。

ペットボトルとボトルデザイン

もうひとつ大きかったのが、ペットボトルの進化 と デザイン・広告 の力です。

500mlペットボトル解禁で「持ち歩く水」に

1996年、小容量ペットボトルが解禁されてから、
コンビニや自販機に、500mlの水がずらりと並ぶようになります。

  • 通勤電車で1本
  • オフィスのデスクに1本
  • ジムやヨガに行くときに1本

水は「たまに買うもの」から、
「常に手元にあるべきガジェット」 へと進化しました。

スマホと同じで、一度「ないと落ち着かない」状態になると、
もう元の世界には戻れません。
(スマホと違って、電池切れの心配がないのが水のいいところ)

「山」と「自然」をまとうボトルたち

ミネラルウォーターのラベルを思い出してみてください。

  • 南アルプス、北アルプス、富士山、阿蘇…
  • 雪をかぶった山、澄んだ湖、森の緑

どれもこれも、「都会のど真ん中で、自然を連れて歩ける」 デザインになっています。

それはつまり、

「デスクワークで疲れてるけど、心だけでも山に行きたい」

という、現代人のささやかな願望をくすぐるデザイン。

ボトル1本持っているだけで、
なんとなく
「自然派の自分」
「意識高い自分」
になれた気がする。
マーケティングとしては、かなり巧妙です。

エコ・サステナブルが“新しいかっこよさ”に

ここ数年は、

  • 軽量ペットボトル
  • ラベルレスボトル
  • 再生PET
  • アルミボトル

など、環境配慮 が新しいブランド価値になっています。

「いろはす」がクシャっと潰せるボトルで話題になったり、
透明ラベルレスのボトルが「ミニマルで映える」とSNSでシェアされたり。

水そのものだけでなく、
ボトルの形や素材まで含めて、
「どんな水を選ぶか=どんなライフスタイルを選ぶか」
という自己表現のツールになっているのが、今のミネラルウォーターです。

私たちはこれからも「水を買い続ける」のか?

ここまで見てきたように、

  • 『水はタダ』という価値観
  • 蛇口をひねればOKなインフラ
  • お茶文化
  • 都市化と不安
  • 健康志向と避糖
  • ペットボトルとデザイン、広告
  • 防災・猛暑・エコ意識

こうした要素が少しずつ積み重なって、
気づけば私たちは、当たり前のように水を買う人間 になりました。

じゃあ、この先はどうなるのか。

  • ウォーターサーバーで「家の中に専用の水インフラ」を持つ人
  • 高機能浄水器で「水道水をアップグレード」する人
  • マイボトル&給水スポットで「そもそも買うペットボトルを減らす」人

「水を買う」行為は、
これからますます多様なスタイルに分かれていきそうです。

最後に

今日の一口をどう選ぶか

もしこの文章を読んでいる今、
あなたの手元にペットボトルの水があったら、
ぜひラベルをじっと眺めてみてください。

そこには、山の名前や、水源地のストーリー、
環境へのメッセージが、小さな文字でぎゅっと詰め込まれています。

それは単なる 「のどの渇きをいやす液体」 ではなく、
あなたが選んだ 「小さなライフスタイルの宣言」 なのかもしれません。

次にコンビニの冷蔵庫の前で、
「どの水にしようかな」と悩んだとき、
こう思い出してもらえたらうれしいです。

「この1本のボトルの裏には、
明治から続く“水を買うようになるまでの物語”が詰まっているんだな」

そしてそのたった1本が、
ちょっとだけ自分の生活を見つめ直す、きっかけの一口になったら──
それもまた、悪くない「水との付き合い方」だと思いませんか。

ABOUT ME
佐藤直哉(Naoya sato-)
佐藤直哉(Naoya sato-)
ブロガー/小説家
文章を書くことを楽しむ自称・小説家です。
歴史や文化、日々の暮らしに潜む雑学を題材に、小噺や物語のタネになるエピソードを発信しています。
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