あの頃みたいにゲームにハマれないのはなぜ?――“大人ゲーマーの事情”
はじめに

最近ゲームに長時間ハマれない……
「昔は朝までゲームして、そのまま学校行ってたのに」
「今は30分で“今日はもう十分かな…”ってなるんだが?」
そう呟きながら、気づけばコントローラーを静かに置く──。
その瞬間の自分に、ちょっとしたショックを受けた経験、ありませんか。
さらに追い討ちのように、心の中でこんな声が聞こえてきます。
- 「この時間、副業に回すべきじゃ?」
- 「洗濯物、昨日から放置してるよね?」
- 「積みゲーより先に積みタスク消そう?」
……誰?
呼んでないのに勝手に出てくる“内なる上司”。

でも実はこれ、あなたが特別弱くなったわけでも飽きっぽくなったわけでもなく、
多くの大人が通る“通過イベント”なんです。
イギリスの調査では、約2,000人の成人の多くが「29歳ごろから遊び心が減ってきた」と感じているとの結果もあります。
つまりこれは、あなたの不調ではなく、ほぼ“世界共通のステージ進行”。
では、なぜ大人になるとゲームが前ほど楽しく感じられないのか?
単なる“忙しいから”では片付けられない奥行きのある理由を、少し整理してみます。
※本記事は筆者個人の感想をもとにエンターテインメント目的で制作されています。
忙しくなった…だけではなく

■「忙しさの感じ方」が変わった
大人になると多くの人がこうなります。
- 朝:仕事に行く準備
- 昼:仕事
- 夜:仕事の疲れを抱えたまま家事
- 深夜:やっと自由時間、しかし眠気が強敵
学生時代は「ゲームのために時間を作る」でしたが、
大人になると「ゲームが時間を奪う」感覚になりがちです。
そして厄介なのは、この“奪っている感覚”が、
「本当はほかの大事なことがあるんじゃ?」
という罪悪感を自動生成してしまうこと。

心理学では、現代人が慢性的に「時間が足りない」と感じる状態を“時間の飢餓(タイム・ファミン)”と呼びます。
- やることは増える
- 自由時間は減る
- 自由時間すら「有意義に使え」とプレッシャーがかかる
そしてついに──
ゲーム中でもTODOリストが脳内で点滅し始める。
ゲームがつまらなくなったのではなく、
心の余白が減った結果“楽しむためのバッファ”が不足しているのです。
「楽しさの3条件」が、見事に崩れやすくなる

■楽しいと思うのに必要な条件
ゲームを楽しむための有名な心理学理論に、自己決定理論があります。
人が「楽しい!」と感じるには、この3つが必要だと説明されています。
- 自律性:自由に選べる感覚
- 有能感:上達している実感
- 関係性:誰かとつながっている感覚
ところが大人になると、この3つすべてが見事に崩れていくのです。
● 自律性:自分のペースで遊べない

- 残業
- 家事
- 子育て
- 突発の連絡
これらによって、
「やりたいときに遊べる」が成立しづらくなる。
「よしっ今日こそゲームする!」と意気込んだ瞬間に、
子ども「遊んで!」
仕事「ちょっと対応して」
家族「今だけ手伝って」
など、強制イベントが連続発生します。
自律性ゲージは大幅ダウン。
● 有能感:若い頃のようには勝てない

- 反射神経が若い頃のようにキレない
- 練習する時間が圧倒的に足りない
- ランクマの相手は世界の猛者ばかり
結果、
「あれ?昔はもっと強かったんだけどな…?」
という現象が発生します。
有能感もごそっと削れる。
● 関係性:一緒に遊ぶ仲間がいない

学生時代は、
- 放課後ゲーセン
- 友達と攻略共有
- 宅飲みしながらマリカー
と、関係性の供給が自動でした。
大人はどうか?
- 友達は忙しい
- 遊ぶ時間帯が合わない
- 好きなゲームがバラバラ
結果、関係性ゲージも減っていく。
つまり──
ゲームの楽しさの3本柱が全部揺らぐのが大人。
楽しめないのも無理はありません。
若い頃は“ゲームにハマりやすい脳”だった

■若いころのようにはやっぱりいかない……
「最近ゲームにワクワクしない…」
その理由のひとつが、脳の報酬系の変化です。
ゲームで感じる「楽しい!」という衝撃にはドーパミンが関わります。
ですが研究によると、
- 思春期〜20代前半は報酬への反応が最も強く
- その後、年齢とともに緩やかに低下する
ことが分かっています。
つまり、
若い頃のあなたは、そもそもゲームにハマりやすい時期だった
というわけです。

さらに、大人になると“現実の報酬”の比重が上がります。
- 給料
- 評価
- 家庭の安心
これらがゲームと同じくらい、いやそれ以上に満足感をくれるようになります。
ゲームの優先順位が下がるのは当然の経過なのです。
見えてしまう作り手の意図

■「慣れ」と「期待値の上昇」
ゲームに限らず、人間には“慣れる”性質があります。
これを心理学では快楽の適応といいます。
昔は毎回驚いていた新作ゲームも、経験値を積むほどに、
- 「この展開どこかで見た」
- 「このシステム前のやつに似てる」
と、すぐ気づいてしまう。
これは脳が優秀だから起きるだけの現象で、あなたの感性が鈍ったわけではありません。
しかし結果的に、
1本目の神ゲーほど、10本目の神ゲーは刺さらない
という現象に。

そこに現代ゲームの構造も加わります。
- デイリーミッション
- ログインボーナス
- バトルパス
- 周回前提の作業
これらは若い頃なら「やり込み要素」として楽しめたかもしれませんが、
大人にとってはただの“タスク”です。
朝から晩までタスクに追われたあとに、さらにタスクを遊ぶ余裕は大人にはありません。
それでもゲームを楽しめている大人

■大人でもゲームを楽しむ方法
ここまで読んで、
「もう昔みたいに楽しめないのかな…」
と感じたかもしれません。
でも心配はいりません。
大人でもゲームを満喫している人はいます。
そして彼らには共通点があります。
● ① 遊んでいい“許可”を出している

- ゲーム=ムダ と決めつけない
- 気分転換や休息と認識する
- 30分でも「ちゃんと遊ぶ時間」として扱う
罪悪感が減るだけで、満足度はかなり上がります。
● ② 遊び方を“今の自分仕様”にする

若い頃のように長時間プレイはできません。
それを前提に遊び方を変えているのが上手な人です。
- ガチ対戦 → ストーリー重視
- 周回ゲーム → 短時間で完結するもの
- 完全クリア → 自分の好きな範囲だけ
これは妥協ではなく、大人のアップデート。
● ③ 人との時間を楽しむためのツールとして使う

- 家族とゆるく協力プレイ
- 友達と定期的にオンラインで雑談しながら遊ぶ
こうすると自己決定理論の「関係性」が回復し、楽しさが戻りやすくなります。
最後に

“つまらなくなった”のではなく、楽しみ方が変わっただけ
ここまでの話をぜんぶまとめると、答えは意外とシンプルです。
ゲームがつまらなくなったんじゃない。
あなたの人生がアップデートされて、楽しみ方が変わっただけ。
時間の価値は上がり、脳の反応は大人仕様になり、背負う責任や優先順位も変化しました。
その変化に“遊び方”が追いついていないだけなのです。
だからもし、昔ほど没頭できなくても
──それは不調でも衰えでもなく、ただのステージ変更。
今の自分に合ったペースや楽しみ方を選び直すだけで、意外なほどまた楽しめることがあります。

そしてもうひとつ、大事な視点があります。
若い頃のゲーム体験は、確かに鮮烈でした。
でもあの鮮烈さは「感性が若かったから」ではなく、ただ“初めての体験”が多かっただけ。
経験を積んだ大人になった今は、昔のような衝撃ばかりを求めなくていい。
代わりに──
今の自分にフィットする楽しみを、自分で選べる力がある。
これは、若い頃にはなかった特権です。
なので、無理に昔の感動を再現しなくても大丈夫。
お気に入りの棚に、新しい楽しみをひとつずつ置いていけばいいだけです。
その棚の端っこに、まだ少しだけスペースが残っているなら……
今夜、コントローラーをそっと手に取ってみても良いかもしれません。
そして“内なる上司”には、今日くらい静かにしておいてもらいましょう。

