なぜ人は“そこまでして”FIREを目指したくなるのか?――『仕事やめたい』が、どうして人生戦略に育ってしまったのか
はじめに

朝の満員電車で、肩と肩が密着しすぎてもはや“他人の体温クイズ大会”みたいな状況の中、ふとスマホで検索するワードといえば――。
「fire どうすれば 出来る?」
はい、あなたもやりましたね?
私もです。
Google先生は今日も容赦なく、
「仕事辞めたい けど 怖い」
「早期リタイア 不安 老後」
など、こちらの心の声を代弁してくれる検索候補を出してくれます。
やめてほしいような、ありがたいような。

最近では「FIRE(早期リタイア)」という言葉がひとり歩きしすぎて、
「FIRE=人生のボーナスステージ」
みたいに語られることすらあります(盛ってます)。
でも本題はここからです。
なぜ人は、ここまでしてFIREを目指したくなるのでしょうか?
「楽したいだけでしょ?」という話で片づけずに、“FIREが魅力的に見える深層心理”まで紐解いて考えてみます。
※本記事は筆者個人の感想をもとにエンターテインメント目的で制作されています。
FIREとは何なのか?

■昔の「アーリーリタイア」とは別モノなのか?
まずは基本のおさらいです。
FIRE = Financial Independence, Retire Early、つまり「経済的自立して早期リタイアすること」
多くの人がイメージしているのは、
- 生活費の25倍の資産をつくり
- 年4%ずつ取り崩して生活し
- 働くかどうかを自分で選べる状態
この「FI(経済的自立)」こそがFIREの本質です。

昔の“アーリーリタイア”は、
「会社を売った人」や「高額退職金をもらった人」が優雅に50代で退場する
そんな、いわば“富裕層専用の出口”でした。
ところがFIREは違います。
- 会社員でも
- 共働きでも
- 賃貸暮らしでも
理論上は誰でも目指せる方法論としてインターネットで広まりました。
数字でシミュレーションできてしまう。
これが革命的だったのです。
実は…

■FIREしたい人は国民の約8割という現実
各種調査では、
「可能ならFIREしたい」=約8割
もう国民的アニメの視聴率みたいな数字です。
特に20〜30代では、
- 「実現したい」人が3〜4割
- 「実現の目処が立っている」人が3割台
という、なかなか本気のデータが出ています。
学生の頃は「リタイアは66歳かな」と考えていたのに、社会に出た途端「57歳で辞めたい」に急降下するという数字もあります。
現実は厳しい、ということを人生の序盤で学ぶわけですね。
表向きの理由

■「自由になりたい」…それはそうなんですが
アンケートで多いのはこのあたりです。
- 仕事から解放されたい
- 時間を自由に使いたい
- 好きなことをして暮らしたい
- そもそも働くのが好きではない
はい、100点満点で「それはそう」
ただ、この答えだけで終わらせると、FIREの本質には辿りつけません。
もし単に「遊びたいから辞めたい」だけなら、ここまでのムーブメントにはなっていないでしょう。
遊びたいだけなら“旅行に行く”“有給を取る”など短期的な解決策が選ばれるはずで、わざわざ人生設計そのものを見直す必要はないからです。
ここまで多くの人がFIREに惹かれているのは、もっと複雑で、もっと切実な理由が積み重なっているのです。
本当の理由①

■将来が“見えるようで見えない”不安
● 「70歳まで働く時代」と言われても…イメージ湧きません
現役世代が直面しているのは、こんな状況です。
- 給料は伸びづらい
- 税金と社会保険料は伸び続ける
- 年金制度の先行きが見えない
- 定年は延びるのに、終身雇用は揺らいでいる
この未来を見て「よし、頑張ろう!」と思える人の方が少数派ではないでしょうか。
「老後が不安だから働く」のではなく、
「働き続けても不安が消えない」という構造になってしまっている。
ここがポイントです。
本当の理由②

■「会社に人生を明け渡すリスク」が見えるようになった
昔は、
良い会社 → 定年まで働く → 年金生活
という一本道の人生が“正解”として存在していました。
ところが今は、
- 転職が当たり前
- 副業解禁
- リモートワーク普及
などによって、働き方が多様化しました。
この変化によって浮き彫りになったのは、
「会社1つに人生を預けるリスク」
です。

FIREを目指す人の多くが求めているのは、
「辞めたい」ではなく「選べる状態」
なのです。
最近話題の“FI会社員”はその象徴です。
FI(経済的自立)を達成しているのに、あえて会社員を続ける人たち。
「辞められるけど辞めない」という選択肢そのものが、精神的な自由につながっているのです。
本当の理由③

■資本主義のスピードについていけない疲労感
FIREの背景には、消費社会への違和感があります。
- 稼いで
- 消費して
- もっと稼いで
- もっと消費して
このループに乗り続けることを疑問に感じ始めた人が増えています。
Lean FIRE の「生活コストを抑えて早めにFIしたい」人も、Fat FIREの「豊かさを維持しつつFIしたい」人も、根っこにあるのは同じです。
「お金を稼ぐことだけが人生の中心になっている状態を抜けたい」
という感覚です。
FIREの多様化

■もはや“完全引退”とは限りません
FIREは「仕事を辞める」運動ではありません。
実際、こんなスタイルがあります。
- サイドFIRE:資産運用+パートタイムで生活
- Barista FIRE:軽い労働を組み合わせる暮らし方
- Coast FIRE:若いうちにある程度投資して、あとは運用に任せる
- Lean FIRE:ミニマルな生活費でFI
どれも共通しているのは、
“自分で働き方を選べる”という自由
です。
これこそ、FIREが支持される最大の理由かもしれません。
一方でFIREには「影」もあります

■光があれば影もある
もちろん、FIREはなんでも解決してくれる魔法ではありません。
- 貯蓄しすぎて生活の満足度が下がる
- 家族が反対するケースも多い
- FIRE後に孤独感に悩む例もある
- 投資リスク(特にFIRE直後の暴落)は現実的 つまりFIREとは、
別の種類のリスクと引き換えに、別の種類の自由を得る行為
なのです。
それでもFIREを目指す理由

■主導権への渇望
では、なぜそれでも人はFIREに惹かれるのでしょうか?
その核心はとてもシンプルです。
「流される人生」ではなく「選べる人生」を生きたい
学生の頃に放置した夢、仕事に追われて諦めた挑戦、いつかやりたいと思っていたこと──。
それらを“老後の楽しみ”にせず、働き盛りのうちに取り戻したい。
FIREは、そのためのひとつの戦略なのです。
最後に

あなたは「何から自由になりたい」のか?
最後に、あなたへの質問です。
あなたが欲しいのは、
- 「二度と働かなくていい人生」ですか?
- それとも
- 「働く・働かないを自分で選べる人生」ですか?
もし後者なら、必ずしも“フルFIRE”でなくても構いません。
プチFIREでも、サイドFIREでも、FI会社員でもいい。
最初の一歩は、生活費を1つ見直すことかもしれません。

大事なのは、
「なんとなく今のまま」を抜けて、自分で舵を切ること。
FIREが注目されている理由を突き詰めると、それはきっと、みんなが心のどこかで気づいているからです。
このまま自動運転で定年まで走るより、
一度くらいは自分でハンドルを握ってみたい。
あなたがそのハンドルを握り直すのは、いつでしょうか。
答えを考えた瞬間から、もう“小さなFI”は始まっています。

